第二十八話「バレンタイン」

2月14日。

スナフキンがいつも来る時間が

もうすぐやって来る。

「スナフキン…なんて言うかしら?」

ミク姫は真っ赤な小さな包みを持って

緊張していた。

中身はミク姫がこっそりメイドと作った

チョコレート菓子だった。

(生まれて初めての告白ね…)

ドキドキと自分の鼓動が速いのを

ミク姫は感じていた。

こんな緊張も初めてだった。

コンコンコン

窓がノックされたのは

その時だった。

「スナフキン!」

「ミク姫?

なんだかいつもと違うね。

どうしたの?」

すぐにミク姫の様子がいつもと違うことに

気がついたスナフキンは

部屋の床にトンと着地した。

「今日…何の日か知ってる?」

「え?

今日は…確か2月14日だよね」

スナフキンはすぐにはミク姫の意図が分からなかった。

しかし

「うん、バレンタインの日よ」

「あ…」

ミク姫の言葉と持っている包みを見て

スナフキンは悟ったようだった。

そんなスナフキンを見て

ミク姫はゴクンと喉を動かした。

「スナフキン…勇気を出して言うわ。

私、あなたが好きなの」

「ミク姫…」

しかしスナフキンは複雑な表情を浮かべた。

真っすぐにミク姫を見られない。

「僕は旅人で君は姫君だ。

許されるわけがないよ」

「そんなこと、関係ないわ」

ミク姫は泣きそうな声になる。

でもスナフキンはミク姫と視線を合わせない。

「ごめんね。

君の気持ちには応えられないよ」

そう言ってスナフキンは

無言で窓から部屋を出て行った。

「スナフキン…!」

それをミク姫は止められなかった。

ひとすじの涙が

ミク姫の頬を流れた。


to be continued


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