第二十六話「何もしないよ」

「スナフキン!」

「こんにちは、ミク姫」

スナフキンが今日も

ミク姫の部屋にやって来た。

会いたかった二人が会えた瞬間だ。

だから二人とも心からの笑顔を見せた。

「私ね、昨夜

とてもスナフキンに会いたくて…」

「そうなのかい?

奇遇だな、僕もだよ」

スナフキンとミク姫は

微笑みあった。

そしてしばらくそのまま

見つめあった。

無言だったけれど不快ではない。

二人の鼓動が速くなる。

「スナフキン…」

「…」

スナフキンは返事が出来なかった。

(考えてみたら二人きりだから

どんなこともできるんだな)

そうスナフキンは気づいてしまった。

しかし

「さて!今日は何の話をしようか?」

スナフキンは視線も話も

そらしてしまった。

(きっと僕は何もしないまま

ムーミン谷へ帰るのだろうな)

そう思うスナフキンだった。

春がやって来るのは

もうすぐだった。

それを分かっているから二人は苦しかった。


to be continued


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