第二話「出会い」

姫の挨拶は数分で終わり

見ていた人達は興奮気味に感想を話しながら

去って行った。

誰もがミク姫を絶賛していた。

「ミク姫か…」

スナフキンはそうつぶやきながら

お城の周りを歩いていた。

特に理由もなくただ歩いていたかったのだ。

「ん?」

そしてスナフキンは不意に足を止めた。

城壁はあるが

古くて大きな樹を登れば中に入れそうな場所を

スナフキンは見つけてしまったのだ。

「不用心だな。

でもこれで姫に会えるかもね」

何故かスナフキンは

ミク姫に会いたかった。

(ミク姫に会ったら、さっきのソワソワの理由が

わかるかな…)

そう思いながらスナフキンは

樹を登り始めた。

幸い、それを咎める兵士はいなかった。


ミク姫は自分の部屋で

机に向かって本を読んでいた。

それは恋愛小説だった。

(いつか私もこんな恋がしたいわ…)

ミク姫がそううっとりとしている時だった。

トントントン

窓を叩く音がした。

「え?」

ミク姫が窓の外を見ると

彼女にとって見たことがない人が

笑って手を振っていた。

(疑うべきなのだろうけど…)

ミク姫はその笑顔につられて

窓を開けた。

ミク姫は不安に思わず

むしろ、とてもドキドキしてワクワクした。

「開けてくれて

ありがとうございます」

トンと音を立てて

スナフキンは部屋の床に立った。

「あ、あなたは?」

「僕はスナフキン。

ムーミン谷から来た旅人だけど

怪しい人ではないですよ」

スナフキンはそう言うと

ミク姫の右手を右手で優しく取り

跪いた。

「お会いできて光栄です。

ミク姫」

「やだ…」

ミク姫は照れてしまった。

先程からミク姫はドキドキしすぎて

顔は赤かった。

「旅人ということは

この国の人ではないのでしょう?

なら敬語は使わなくていいわ」

会ったばかりだが

ミク姫はすっかり

スナフキンを信用していた。

(理由は分からないけれど

この人から悪意は感じられない。

兵は呼ばなくていいわね)

ミク姫はそう思った。

「わかりました。

ではなく、わかったよ」

コンコンコン

ノックの音がしたのは、その時だった。

ハッと二人に緊張が走る。

スナフキンは侵入者には違いないのだから。

「ミク姫様。

そろそろお時間ですが…」

ノックをしたのはミク姫のお付きの侍女だった。

「今行くわ!」

ドアの向こうの侍女にそう返事をして

ミク姫はスナフキンを見た。

「ごめんなさい。もう時間が…」

「じゃあ僕は失礼するよ」

「あ!待って!」

ミク姫は思わず

スナフキンの緑色の服を掴んだ。

「ミク姫?」

スナフキンが驚いてミク姫を見ると

ミク姫は真剣な瞳でスナフキンを見つめた。

「明日この時間

また来てくれないかしら?」

掴んだ服を離して

ミク姫はそう言った。

「君がいいなら

もちろん来るよ。

じゃあ、また明日ね」

スナフキンは窓から外に出た。

スナフキンがミク姫に

会いたがったように

ミク姫も、またスナフキンに会いたいと

何故か強く思うのだった。


to be continued


しおりを挟む