第五十七話「正体」


「ナタリアが戻っていると助かるんだけどな…」

バチカルの城の前でルークがつぶやいた。

「呼びまして?」

すると張本人のナタリアが兵を連れてやって来た。

ケセドニアの視察の帰りだと言う。

「それよりちょうどいいところに!」

ナタリアは突然、ジェイドの襟をつかんだ。

「おや…!」

「な、ナタリア?!」

しかしジェイドは驚きはしない。

対照的に未来は硬直した。

「まあ、相変わらず涼しい顔で!

どういうことですの?!

我がキムラスカ王国は平和条約に基づき

マルクト軍に対して

軍事行動を起こしてはいませんのよ」

「ああ、やはりそうでしたか」

「やはりそうでしたかではありません!」

ナタリアはケセドニアで屈辱を受けたと

さらにジェイドに非難をする。

「とりあえずナタリア〜。

そろそろ大佐から離れないと

未来が妬いてるよ?」

もはや恒例となりつつある

アニスの未来達へのからかいが始まった。

「嬉しいですね〜」

「え?わ、私は別に…」

ジェイドは面白がったが

未来は図星で、ジェイドの顔を見れなかった。


インゴベルト六世とナタリアは

キムラスカ王国は無実だと言う。

そしてジェイドはレプリカの兵士かもしれない

と憶測した。

モースが預言を再現するために

両国を対立させているのかもしれない。

ナタリアは

預言の今後について会議を開催するため

導師イオンのお力が必要とするので

ダアトへ行きたいと言い出した。

「ダアトへ行くんだ…」

「ええ、その方がいいはずだわ」

アニスはなぜか帰りたくなさそうだったが

未来に説得された。


ダアトへ着くと先頭を歩いていたティアが

突然倒れこんだ。

「ティア!?」

慌ててルークは彼女を支える。

「ご、ごめんなさい。

少しめまいがして…」

ティアは笑おうとしたが

顔色は悪い。

「私、イオン様を呼んでくる!」

アニスが慌てて教会へ走っていった。


ティアはイオン様のベットに横になった。

「どういうこと?

障気を吸わなければ、進行しない病気でしょ?」

「やはりティアの体に蓄積した障気の除去を

考えた方がいいのではなくて?」

心配そうに未来とナタリアが言った。

「あの実は僕、ティアの障気をなくす方法に

心当たりがあるんです」

イオン様の突然の言葉に

全員が驚く。

「ただそれを行うには、僕の…」

「イオン様!大変です!」

突然アニスが部屋にやってきて

障気が出てきたとイオン様を外へ連れて行った。


慌ててアニスとイオン様を

追いかけた未来達だが

外へ出るための譜陣には

神託の盾の兵士とリグレットが待ち構えていた。

「動くな!大人しくしてもらうぞ」

銃を構えたリグレットに

無理をして立っているティアがナイフを投げたが

かわされてしまう。

「投げに移る動作が遅いと言っただろう!

同じ間違いを二度犯すな」

「…くっ」

悔しそうにティアがうめいた。

「まずいわね…」

未来も悔しそうにもらしたが

それを助けたのはライガを連れた

アリエッタだった。

リグレット達はイオン様に第七譜石の

詠みなおしをさせるつもりらしい。

そんなことをしたらイオン様は死ぬ。

「ルーク!例の隠し通路へ急ぎましょう!」

「そうです!

確かにアニスの様子はおかしかった」

未来とジェイドがルークをせかす。

「わかった。アリエッタ、ありがとう」

この場はアリエッタが引き受けてくれて

隠し通路がある図書室へ向かった。


隠し通路の前に

イオン様を連れたモースとアニスがいた。

「アニス!

ここは任せたぞ!

裏切ればオリバー達のことはわかっているな」

モースはイオン様を連れて

隠し通路へ向かってしまった。

「おい、アニス!

オリバーさん達がどうしたって言うんだ?」

「うるさいな!」

ガイの言葉にアニスは

悲しそうにうつむき

「私は元々、モース様に

イオン様のことを連絡するのが仕事なの!」

ガイにぬいぐるみを投げつけ

隠し通路に向かって走った。

「待ちなさい!」

ジェイドを先頭に、アニスを追いかけ

隠し通路へ着いたが

セフィロトに転送するはずの譜陣は反応しない。

「急がなくてはいけないのに…!」

「他にセフィロトへ行く方法はないのかしら?」

未来とティアも焦り始める。

しかしアニスがガイに投げつけたぬいぐるみに

『ザレッホ火山の噴火口から

セフィロトへ繋がる道あり

ごめんなさい』

とアニスからの手紙があった。

モースはアニスの両親を

人質にとっているかもしれない。


教会からザレッホ火山へ向かうために外へ出ると

障気が溢れていた。

そして街の出入口に奇妙な服を着た人達が

道をふさいでいた。

「彼らはレプリカではないでしょうか。

以前、レプリカを軍事転用するために

特定の行動を刷り込むという実験を

していました。

彼らの目は、その被験者達によく似ています」

ジェイドが淡々と言い

レプリカかもしれない人達の中には…

「姉上…」

「し、シトリン?!」

ガイと未来は動揺を始める。

未来の視線の先には

未来と同じ銀髪も短い

よく未来と似た少年が立っていた。

「姉上?シトリン?

ガイと未来、一体何を…」

「どうしてだ…どうして姉上がいる!?」

取り乱していく二人の前に

槍を構えたジェイドが立った。

街の出口方向のレプリカを

始末するつもりらしい。

「待って!ジェイド!

その人はシトリン!

戦死したはずの、私の弟なの!!」

「レプリカですよ?!」

「未来!私に任せて」

ティアが譜歌を歌いレプリカ達を眠らせたが

大勢を眠らせたティアは

倒れこんでしまった。


急いで第四碑石前まで逃げたが

「くそ!頭の中がぐちゃぐちゃだ!」

ルークは立ち止まり、頭を抱えた。

「未来達に縁のあるレプリカを作って

動揺を誘うつもりかしら?」

「モースの奴、どこまで汚いんだ!」

ルークは悔しかったが

今はイオン様の元へ向かうしかなかった。


to be continued

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