第五十六話「再会」


ヴァンとの激戦が終わり

未来とジェイドがグランコクマへ帰って

一か月が経った。

このまま軍での仕事が続くだろうと

未来が思っていたある日。

「未来!大変だ!」

「ピオニー陛下?!」

慌ただしく第一師団にある未来の部屋へ

ピオニー陛下がかけこんできた。

「アスランが負傷した」

「フリングス将軍がですか?!」

未来は慌てて席を立った。

「ああ。

今、運ばれてきたが…

未来、お前の力が必要だ」

ピオニー陛下は未来の両肩をつかんだ。

「それほど危険な状態なのですね」

マルクト軍で一番強い治癒術師は未来だが

他にも強力な治癒術師はたくさんいる。

ピオニー陛下がわざわざ未来に頼みに来たなら

かなり重症ということだろう。

「すぐに向かいます」

「頼んだ」

未来はフリングス将軍が運ばれた部屋へ

急いだ。


「くれぐれも安静に」

フリングス将軍の傷を彼の部屋で癒し

未来はほっと安心のため息をついた。

「わかりました。

それにしても、なんとお礼を言えばいいか…」

「お礼なんかいいわ。あら?」

未来はベッドのそばの写真立てを見つけた。

それは赤い軍服を着た女性の写真だった。

「見られてしまいましたか…」

「ごめんなさい。でも彼女は…」

「ええ、キムラスカ軍のセシル少将です。

そして、僕の…」

そこまで言ってフリングス将軍は

恥ずかしそうにうつむいた。

「大切な人、なのね」

微笑ましい、と未来は思い

同時に自分の『大切な人』

会えない日が続くジェイドの顔が

頭をよぎった。

「ええ…だからこそ

キムラスカとの平和を祈っているのです」

「そうね、私も祈っているわ」

そこまで言うと未来は部屋を出ようとし

「それじゃ…お大事に」

そう言い残した。


「未来?

フリングス将軍の容体は?」

未来が部屋を出ると

懐かしい人達が立っていた。

「あらジェイド、お久しぶりね。

みんなも…」

会いたかった人達との再会に

未来は微笑む。

「えー!

私達はともかく

大佐とも会ってなかったの?」

信じられない、と

アニスの顔には書いてあった。

「お互い、忙しかったのよ。

それより、フリングス将軍の傷は

完治させたわ」

「さすが、未来だな」

ルーク達は安心したが

「けど、また倒れないでくれよ?」

ガイは未来を心配した。

「大丈夫。ありがとう、ガイ。

それより…」

ガイにお礼を言った未来は

ジェイドと瞳を合わせた。

「ここで話すのもなんだから

私の部屋へ行きましょう。

フリングス将軍の報告もしたいし」

「そうしましょう」

ジェイドは軍人の顔でいるように

気を付けた。


「フリングス将軍の報告では

我が軍が何者かに攻撃されたらしいのだけど

それはキムラスカ軍旗を掲げた

一個中隊程の兵だったそうよ」

自室で未来は淡々と言った。

「そんな馬鹿な!」

ルークは驚いて

椅子から立ち上がる。

「落ち着いて聞いて、ルーク。

彼らは第五音素を用いた譜業爆弾で

自爆攻撃をしてきたとか…」

「とても正規軍が行う用兵ではないわ」

ティアが顔をしかめた。

「そうね。

軍服を着たのは一部のみで

みんな生気のない死人のような顔をしていたと

言ってたわ」

「どうなっているんだ」

ガイは茫然とする。

「私はこれからピオニー陛下に謁見します。

ルークにもご同行願いたいのですが」

「俺?別にいいけど…」

「なんだ?歯切れが悪いな」

ガイの言う通り

ルークは浮かない顔をしていた。

「…俺、あの人ちょっと苦手なんだよな」

「なんで?すんごいお金持ちなのに」

「私も聞き捨てならないけど…

まあ、いいわ」

アニスと未来はそんなことを言いながら

歩き始めた。


謁見の間で、ピオニー陛下は

キムラスカ王宮へ事実を照会するよう

ルークへ頼んだ。

そしてローレライの鍵のためにも

アッシュを探さなければならない

という話にもなる。

また地核に沈んだシンクもヴァンも

生きている可能性が出てきた。

「こちらも調査はさせる。

ジェイドと未来はキムラスカの動向を確認後

アッシュを負え」

「わかりました、陛下」

未来は当然うなずく。


アニスがイオン様に手紙を出すと言い

街の入り口でアニスを待つことになった。

ティアは兄さんが生きているのを不安に思い

ルークはそんな彼女を励ました。

しかしガイはそんなルークを見て

ルークが陛下が苦手な理由が

なんとなくわかったという。

「ジェイド、どうしたの?

さっきからニヤニヤしているわ」

「いえ。懐かしいなぁと思いまして」

ニコリとジェイドは未来に笑う。

「ディストも陛下が大嫌いでしたから」

その一言にルーク以外が笑い

バチカルへ向かうことになった。



to be continued

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