第五十三話「アブソーブゲート」


翌朝。

「僕はここで皆さんの帰りをお待ちしています。

ですから、すべての決着はアニス

あなたに見届けてもらいたい」

イオン様に見送られ

未来達は決着の地

アブソーブゲートへ向かった。


「すごい音素を感じるですの」

ミュウの言う通り

アブソーブゲートからは

強力な音素が放たれていた。

「ここは最大セフィロトの一つ。

プラネットストームを生んでいる

アブソーブゲートですからね」

ジェイドもうなずく。

「ノエルは、ここに一人で残るのか。

毎度のことだが、心細くはないかい?」

「ノエルのために

一人残るべきかもしれないけれど

今の私達には、その余裕はないわね」

ガイと未来は心配そうにノエルを見たが

ノエルは首を横に振った。

「ガイさん、未来さん

ありがとうございます。

私はここで、皆さんのご無事を祈っています。

お気をつけて!」
                      
「ありがとう、行ってくるよ!」

ルークがノエルに手を振り

アブソーブゲートへ入った。


どんどん奥へ進んでいくと

大きな地震が起きた。

「気を付けろ、地面が…!?」

しかしガイの注意は間に合わず

「きゃあ!!」

未来達は大きく崩れた床とともに

落下していった。


「未来!未来!!」

「ん…」

体を揺さぶられて未来が意識を取り戻すと

心配そうにのぞく

ジェイドとアニスの顔があった。

「未来、大丈夫?」

「ええ、なんともないわ。

二人は大丈夫?」

「アニスちゃんはトクナガに乗ったけど…

大佐、未来をかばって落ちましたよね?」

「え?!」

未来が慌ててジェイドを見たが

「アニス、未来を困らせるだけですよ」

ジェイドは困ったように笑うだけだった。

「そんな…ケガしているじゃない」

ジェイドの左腕は

手袋が破れ、血がにじんでいた。

「こんなケガを負うとは

軍人として恥ですね」

「待ってて!今癒すから!」

すぐに未来は治癒術を使った。

しかし傷は消えたが、破れた手袋が

痛々しかった。

「ジェイド…ごめんなさい…

私なんかのために」

「『なんか』ではありません」

泣きそうな未来の頭に

ジェイドは愛しさをこめて

手を置いた。

「貴女は私の大切な人です」

「ジェイド…」

「ねえねえ!私のこと、忘れているでしょ?」

「あっ…!」

アニスに言われ

未来は恥ずかしくてジェイドから少し離れた。

「そ、そんなことないわ」

「ふーん、まあいいや」

アニスは笑い、トクナガを大きくした。

「私は先に行ってるね〜。

お二人もすぐに来るんだよ?」

そう言ってアニスは先へ進んでしまった。

勢いよく魔物を倒しながら。

「あ、アニス、強すぎ」

未来はアニスに感服した。

「まったくですね」

ジェイドはメガネを一度おさえ

槍を出現させる。

「では、行きましょうか。

アニスのおかげで減ったようですが

ここから先は強力な魔物がいるでしょう」

ジェイドが歩きながら未来にそう言って

未来もうなずいて短剣を握りしめた。


ジェイドの言う通り、魔物が襲ってきたが

「セイントバブル!」

未来の譜術とジェイドの槍で

跡形もなく始末された。

「二人で戦うのは

チーグルの森へ行った以来かしら」

「そうですね」

二人は笑ったが

あの時より遥かに信頼しあっていることも

わかっていた。


ジェイドと未来が追いついた先には

アニスだけではなく、ガイやナタリアもいた。

「あれ?あんがい早かったじゃん」

「アニス

からかっている場合ではありませんわ」

アニスにナタリアが優しく注意をする。

「そ、そうよ。

それより、ルーク達がまだね」

慌てて未来がそう言うと

「呼んだか?」

ちょうどルーク達が走ってくるところだった。

「二人をお待ちしていました。

大切な話があるのです。

この先にパッセージリングがあるようです」

「じゃあ、この先にヴァン師匠がいるのか…」

決意を固めたルークにジェイドはうなずき

今後の話を始める。


ヴァンを倒したらすぐに外殻を降ろす。

ここからラジエイトゲートまで

アルビオールでもかなり時間がかかり

多分、その間に外殻大地は崩落する。

制御装置に

「ラジエイトゲートへの命令を

アブソーブゲートに変更する」

とルークが命令すると

アブソーブゲートのセフィロトに向けて

第七音素を照射し

これが効果開始の合図になる。


「では、そろそろ行きましょうか。

準備はよろしいですか?」

説明を終えたジェイドが全員に聞いた。

「俺なら大丈夫。みんなは?」

ルークがティアを見て

「もちろんよ。

兄さんは…ヴァンは私が止める」

ティアもうなずき

「これでも一応ヴァンの主人だからな。

部下の不始末には

ご主人様がけりをつけるさ」

ガイも剣に手を添え

「なんとしてもヴァンの企みを押しとどめて

世界を救いますわ」

毅然とナタリアが言い

「私がお金持ちと結婚するためにも

ヴァン総長には大人しくしてもらわないと」

アニスはいつもの調子で

「我が愛するマルクト帝国のためにも

私達は負けられないわ」

未来はいまにも詠唱しそうな勢いだった。

「やー。みなさん、熱いですねぇ」

そんなみんなを見て、ジェイドは笑った。

「あんたはいつも通りだなー」

つられたようにガイも笑い

緊張がいい意味でほぐれていく。

「ええ。私に熱いのは似合いませんから」

「そりゃそうだ。

…よし、行くぞ!」

ジェイドに今度はルークが笑い

ヴァンがいる最深へ向かった。


to be continued

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