おんぶ


「う…!」

戦闘中私は右足を負傷した。

「未来!」

魔物を全て切り裂いて

上官のジェイド大佐が駆け付けてくれた。

「大丈夫ですか?」

「平気ですよ、これくらい…」

そう言って私は立ち上がろうとしたが

痛くて無理だった。

「血が…」

大佐は白いハンカチを取り出して

止血してくれた。

「すみません、大佐」

申し訳なくて涙が出そうだった。

「いえ…それより治癒術士のところへ…」

そう言って大佐は私に背を向けた。

「え?」

「歩けないならおぶっていきますよ」

大佐は優しく言ったけれど

「あ、歩けます」

私は恥ずかしくなって

もう一度立ち上がろうとした。

でもやっぱり無理だった。

「お姫様抱っこでもいいのですが…」

「おんぶしてください」

私は大佐におぶられるしかなかった。

「大佐…重くないですか?」

「未来が重いわけないでしょう?」

大佐はそう言って笑った。

「しかしこのまま陣営に言ったら

冷やかされてしまうかもしれませんね」

「え、それは…」

「困りますか?」

大佐の声は試しているようだった。

「私はいいですが大佐が困りますよね?」

「おや、遠回しな告白ですか?」

大佐は信じられないことを言った。

「え…」

「怪我が治ったらゆっくり話しましょう?」

おぶられて大佐の顔は見えなかったけれど

多分穏やかに笑っていた。

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