第五十話「雪山の前に」


ケテルブルクのネフリーを訪ねると

サフィール(ディスト)が

この街で倒れてしまったらしい。

「確か、飛行譜石を探していた時

あいつから手紙を受け取ったよな」

「もしかして、あの手紙通りにこの街で?」

「律儀にジェイドを待っていたのですね」

ガイと未来の予測にナタリアがうなずく。

「大佐ったら、愛されているんですね〜」

「ははは!未来のライバルかもしれないな」

「虫唾が走りますね」

アニスとガイのからかいに

ジェイドは笑顔で二人を黙らせた。

そしてディストのいるホテルへ向かうことになった。

ジェイドはネフリーに

憲兵をホテルに向かわせるように頼む。

「捕まえるのね。

でも手荒なことはしないで」

ネフリーは幼馴染の一人を心配した。

「じゃあ、ディストのところへ行くか!」

「そうね、病人に無理はさせたくないけれど…」

ルークが一番に部屋を出て

ティアもそう言いながらついていった。

「ああ、ネフリー。

いつものレストランで

待っていてもらえませんか?」

「え?ええ…いいけど…」

ジェイドはそう言い残し、部屋を最後に出た。

その時、未来の顔を見たジェイドは

愛しさにあふれていた。

「ふふ、やっぱりそうなのね。

お兄さんの結婚式に呼ばれるのも

遅くはないかもしれない」

一人部屋に残ったネフリーは微笑んだ。


「ジェイド…待ってよ…むにゃ…」

ホテルでディストがいる部屋に入ると

ディストはそんな寝言を言った。

ジェイドはロニール雪山について聞くから

未来を含めた他のメンバーには

部屋を出てもらうように頼んだ。

「ぎゃーーーー!!」

扉がしまった部屋の向こうから

ディストの悲鳴がすぐにあがった。

「ジェイド、ごめんなさーい!」

「どんな会話だよ」

「かわいそうに」

ガイが冷や汗をかき

未来もディストに同情した。

「お待たせしました」

なぜかとてもいい笑顔で

ジェイドは部屋から出てきた。

ディストからの情報では

雪山は地震の影響で雪崩が頻発していて

奥のほうにかなり強い魔物が住み着いたらしい。


ディストは憲兵に任せて

一階のロビーに未来達は昇降機で降りた。

「ネフリーから

手荒な真似はないでね

と言われたのに…」

未来は少しだけジェイドに批判したが

「おかしいですね〜。

私は手荒なことはしていませんよ?」

ジェイドは笑うだけだった。

「おいおい」

ガイは苦笑いをし、窓の向こうを見た。

「でも、そろそろ夜だ」

「そうだな。

ロニール雪山は明日にした方がよさそうだ」

ルークもうなずき

まずは夕食を食べることになった。

「では、私は未来と別行動にします」

「え?私と?」

ジェイドに手を引かれ

未来は困ってアニスを見たが

にやにやと笑われるだけだった。


「嬉しいけれど、なにか用事があるの?」

「ええ、とっても大事な用です」

未来とジェイドは初めて手をつなぎ

ケテルブルクで一番大きなレストランに向かった。


「ここは私とネフリーが

誕生日のお祝いとかに来たお店です」

「そうなの?素敵なレストランね」

そう言いながらレストランに入ると

ネフリーはもう席に座っていた。


「お兄さんと、こんな食事をできるとは

思わなかったわ」

ワインで乾杯し、ネフリーは微笑んだ。

「ええ、私も自分で意外です」

「どう言うこと?」

未来だけ話についていけなかった。

「ネフリーに未来を改めて紹介したいのです。

私の恋人として」

「ジェイド…」

ジェイドとネフリーに見つめられ

未来は照れることしかできなくなる。

「で、でも、ジェイドはもてそうだけど…」

「こんな風に女性を紹介するのは

初めてですよ。

ね?お兄さん?」

ジェイドは妹にうなずき

未来はとても幸せだった。

その後も三人は話が尽きず

和やかな時間が過ぎていった。


to be continued


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