花びら


「もうすぐ桜が咲きますね」

「え?もうそんな時期ですか?」

ジェイドの執務室で

ジェイドと副官の未来がそんな会話をした。

二人は上司と部下で、密かに恋仲だった。

「でもお花見ってどこも混んでいますよね」

「おや、私は

誰も知らない桜の樹を知っていますよ」

「え?どこですか?」

未来はワクワクしながら聞いた。

「では今度の日曜日にご案内しましょう」

ジェイドはそう言って微笑んだ。


「すごい!」

ジェイドが案内した場所には

桜の大木があって満開だった。

「喜んでいただけたようで嬉しいです」

「でもなんで内緒なの?」

「ピオニー陛下の命令ですよ。

老木だしあまり人が来るのを

嫌がっているんです」

説明しながらジェイドは桜の樹まで歩み寄り

そっと樹に触れた。

「私が知っちゃっていいのかな?」

「貴女は口が堅そうですし、特別です」

ジェイドは隣にいる未来に微笑んだ。

そして花びらが散る中

そっと未来にキスをした。

「綺麗です」

「桜の事?」

「いいえ。貴女のことですよ、未来」

もう一度ジェイドはキスをして

未来はジェイドの背中に手をまわした。

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