番外編「初めての贈り物」


ベルケンドの宿の簡易なキッチンで

アニス、ティア、ナタリアが

楽しそうにチョコレートを作っていた。

そこに未来がやって来る。

「なにしてるの、みんな?

チョコレートの香りがするけれど…」

「あら?」

「未来、まさか…」

「明日がバレンタインて知らないの〜?」

日付は2月13日だった。

「ああ…明日だったわね」

しかし未来は

「気にしない」

という顔をした。

「大佐…かわいそ〜。

本当に恋愛に疎いんだね、未来」

「そ、そうね」

「大佐に贈りませんの?」

「え?私がジェイドに?」

自分に話をふられ、未来は慌てた。

「大佐の方から気持ちを伝えられたのでしょう?

ならば、今度は未来の番ですわ」

ナタリアは溶けていない板チョコを渡した。

「そうそう!

ここの宿でコクられて

キスしようとしたら

ガイに見られたんだよね?」

「そ、その話はやめて!」

未来は焦った。


未来がチョコレートを渡しにジェイドを訪ねると

ジェイドはコーヒーを淹れてくれた。

「あの…これ…」

未来は恥ずかしそうにチョコレートを渡す。

「ああ、今日はバレンタインでしたね」

一瞬不思議な顔をして、ジェイドは受け取った。

「とても嬉しいです。

ありがとうございます」

ジェイドの笑顔を見て、未来は安心した。

「この宿には思い出が多くありますね。

貴女がコーヒーを淹れてくれた日

私が告白した日

そして今日」

コーヒーを飲んでジェイドはそう言った。

「そうね、とても思い出深いわ」

「未来…」

未来はうなずくと、右手をジェイドが握ってくれた。

「ここだけではなく、たくさんの場所で

思い出を作りましょう」

「ジェイド…」

未来はこの上なく幸せで

ジェイドの左手に、そっと左手をそえた。

前のお話 次のお話

TOPへ戻る

しおりを挟む