第四十六話「安心」


「ん…」

未来の意識が戻ったのは

宿の一室だった。

「未来!気が付きましたか?!」

すぐに声が聞こえ、その人は

「ジェイド…」

未来の想い人だった。

「よかった…三日意識が戻らなかったので…」

「三日も?!

そうだ!シェリダンは?

イエモンさん達は?!!」

未来は慌てて起き上がった。

すぐに気になったのは

自分が助けようとした人達だった。

「安心しなさい。

貴女のおかげで全員無事です。

シェリダンのすべての民が…」

「そう…よかった」

未来はほっとしたが

「よくありません!」

ジェイドは否定し未来を抱きしめた。

(え?!)

未来の思考は止まる。

(私…ジェイドに抱きしめられている?!)

未来の肩にジェイドの髪がさらりと流れ

いい香りがした。

そして呼吸の音も聞こえた。

「ジェイド…あの…」

「心配しました、本当に…」

苦しそうにジェイドは言った。

「貴女がシェリダンで力を酷使し

倒れたと聞き

ここ、ベルケンドに運んでもらい…

三日が経ち…」

未来は黙って聞いていた。

「初めて、人が死ぬかもしれないのを

『怖い』

と思いました。

それくらい貴女が大切なんです」

そこまで言うとジェイドは未来から離れた。

「ジェイド…」

「未来、好きです」

ジェイドのその言葉と笑顔に

未来の瞳が潤む。

「私もジェイドが好き」

そうつぶやいた未来は

再びジェイドに抱きしめられた。

おそるおそる未来がジェイドの背中に手を回すと

さらに強く…。

「未来」

甘い声で名を呼び

ジェイドは優しく未来の頬に触れた。

そして顎を少し持ち上げて

自分へ近づける。

そして更に近づいたとき

「ジェイド〜そろそろ夕食に…

って、うわああ!!」

ガイが部屋に入ってきた。

「が、ガイ?!」

未来は慌ててジェイドから離れた。

「ノックをしないとは感心しませんね」

ジェイドは残念そうにため息をついたが

ガイの叫びに他のメンバーが集まってきた。

「どうした、ガイ…って未来?!」

「まあ!」

「気が付いたのね、未来」

「けど、その様子だと…」

離れたとは言え、近い距離にいる二人に

全員が状況を察してしまった。

「そっか…よかったな、未来」

「あ、ありがとう」

ガイの祝福の言葉に未来は恥ずかしくなった。

「あれ?ガイ、目が潤んでない?」

「え?そ、そんなことないぞ!

さあ、未来も目を覚ましたし

夕食を食べに行くぞ!」

そう言ってガイは一人で先に行ってしまった。

「どうしたのかしら、ガイ」

「やれやれ、貴女は本当に鈍感ですね」

ジェイドは笑い、未来の手を握った。

「え?」

「行きましょう。

みんな、待っているでしょう」

「ええ!」

未来はうなずいて

ジェイドに手を引かれて立ち上がった。

つないだ手の感触に

未来は心から安心した。



to be continued

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