第三十五話「セフィロトの暴走」


「ティア…本当に大丈夫なの?」

「ええ。平気よ、未来」

ケセドニアへ行く途中

セフィロトで倒れたティアを心配して

オアシスで一休みをすることになった。

「ホントかよ…

にしても俺達汗臭くないか?

砂漠を渡っているわけだし」

「みんなが臭っていれば、わからないぜ」

ルークが自分の服に鼻を近づけ

そんなルークを見て、ガイは苦笑いをした。

「…ん?ジェイドからいい香りが…」

「未来も甘いにおいがするよ」

アニスが確かめるように未来に近づいた。

「香水よ」

「香りは紳士淑女のたしなみですから」

ジェイドは小さな香水の瓶を見せた。

「確かにいい香りね…さわやかで

…シトラスかしら?」

「よくわかりましたねえ。

未来の香りは…ヴァニラでしょうか?」

「あたり。

ラストノートは甘いすぎるから

変えようか迷ってるの」

「お似合いですよ」

そんな二人の会話を

アニス達は笑って見ていた。


「皆さん!ご無事でしたか!」

休憩を終えて、ケセドニアに到着すると

ノエルが走ってきた。

「そっちこそ!

いつケセドニアケセドニアに着いたんだ?」

「この辺りが降下する少し前です。

エンゲーブの方々は

無事にここまで運び終えました」

ノエルはうなずいた。

「よかった〜お疲れ様!」

「さすが、ノエルね!」

アニスと未来はノエルをねぎらった。

「到着早々申し訳ありませんが

飛んでもらうことはできますか?」

ジェイドは本当に申し訳なく頼んだ。

「もちろんです。

私はアルビオールで待機しています」

そう言うとノエルは来た道を戻った。

「外殻へ戻るのか?」

「少し気になることがあるので

魔界の空を飛んでみたいんですよ」

ジェイドはメガネを押さえた。

「何が気になってるんだ?」

「ジェイド…もしかして…」

「確証のないことは言いたくありません」

ルークと未来にジェイドは首を横に振った。

「大佐がこう言う時は

何か嫌なことがある時ですよねぇ…」

「聞くだけ無駄だったわね」

未来は出来る限りの笑顔を作ったが

自分の嫌な予測があたったと内心は思った。

「わかった。とにかく飛んでみよう」

ルークはアルビオールが止まっている方向に

歩き始めた。


「うわっ!

あのセフィロトツリーおかしくないか?」

「切れかけの音素灯みたい」

ルークとアニスが言った通り

セフィロトは点滅を繰り返していた。

「やはりセフィロトが暴走していましたか…

パッセージリングの警告通りだ」

「ジェイドが気になってたのはこれだったのね。

私も心配してたわ…

嫌な予測が正しくなってしまった…」

未来はパッセージリングの警告を思い出した。

「俺、全然気にしてなかった…

というか気づかなかったよ」

ジェイドが考え込むようにあごに手を添えて

今の状況を話し始めた。


おそらくなんらかの影響で

セフィロトが暴走し

ツリーが機能不全に陥っている。

パッセージリングが耐用限界に到達と出ていた。

セフィロトが暴走した為だろう。

パッセージリングが壊れれば

外殻は落ちてしまう。


「マジかよ!」

ルークが叫んだのを最後に、全員が沈黙した。

しかしルークはセフィロトの暴走は

ユリアの預言に解決方法が書いているのかもしれないと提案した。

そこで機密事項である預言をイオン様に詠んでもらうため

ダアトへ向かうことにした。


「イオンはどこにいるんだ?」

「ご自身の私室ではありませんか?」

ガイとジェイドはそう言って

教会内を見渡した。

しかしイオン様の私室はわからなかった。

「でも導師のお部屋は

教団幹部しか入れないわ。

鍵がわりに譜陣が置かれていて

侵入者対策になっているの」

神託の盾騎士団に所属しているティアは

困ったように言った。

「そんなときには

導師守護役のアニスちゃんにお任せ!

ちゃんとお部屋に続く

譜陣を発動する呪文、知ってるモン」

「頼りにしているわ、アニス」

「えへへ。未来、ありがとう」

アニスは未来の隣を歩き、笑った。


to be continued

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