第三十四話「ザオ遺跡のセフィロト」


最深のセフィロトを目指し

ザオ遺跡の中を歩く。

アッシュの言葉を鵜呑みにしていいのか?

と疑う声もあったが

崩落する前に進むしかなかった。

「なんか魔物が弱くなってないか?」

岩のような魔物を倒したルークが未来に聞いた。

「いいえ、私達が強くなったのよ。

ジェイドの封印術も解けたし」

歩きながら未来は説明し

「そうなのか?」

「まあ、それはよかった…きゃあ!」

封印術の解除に成功したことを知らないガイ達は

喜びの声をあげた。

しかしナタリアが言いかけた時、地震が起きた。

「橋が揺れてる?」

「橋だけじゃないわ。

この地下都市全体が揺れているみたい」

アニスとルークが焦り

ティアも辺りを慎重に見渡した。

「微弱ですが、譜術を感じますね」

「私は感じられませんが…」

「いいえ、ティア。

ジェイドの言う通り

確かに弱い譜術の気配があるわ」

未来の言葉に、全員が武器を構えた。

「だとしても進むしかない。

せめて慎重に行こうぜ」

そう言ったルークは歩き始めた。

「おや、あなたらしからぬ台詞ですねぇ」

ジェイドがルークの隣を歩きながら笑う。

「うるせっ」

ルークはそう言ったが、笑顔だった。


「な、なんだ!?地震!?」

セフィロトの入り口に入ろうとした時

再び地面が揺れた。

「違います。これは…」

「譜術の気配が強くなっている!」

いつでも詠唱できる状態で

ジェイドと未来は、皆に注意を促す。

「危ない!」

ティアが叫んだ時

化石のような巨大な魔物が出現した。

「来ますよ!」

ジェイドは叫び、魔物の懐に入ろうとしたが

尻尾で跳ね飛ばされてしまった。

(珍しいわね、ジェイドが…)

そう思いながら未来はスプラッシュを放つ。

「やってやるぜ!」

「消えなさい」

するとルークとジェイドが同時に叫んだ。

「うぉぉぉぉぉ!これでも、喰らえぃ!」

「旋律の縛めよ

死霊使いの名の下に具現せよ!

ミスティック・ケージ!」

二人の秘奥義が炸裂し、魔物は動かなくなった。

「あら、私達の出る幕はなかったわね」

未来はそう言って短剣をしまった。

「未来

いつかのお坊ちゃまみたいなことは言うなよ」

「それって、俺のことか?」

ガイとルークが苦笑した。

「もちろん冗談よ」

にこりと未来は笑った。

「にしても、こいつは一体…」

「創世記の魔物じゃないかしら?

こんなに好戦的ではなかったと思うけど…」

そう言いながらティアは

魔物を調べている未来の隣に立った。

「なんでもいいよう。」

「同感ですね。では行きましょうか」

そう言って

アニスとジェイドがセフィロトの中へと入り

未来達も続いて扉をくぐった。


「ほわ〜。ひろ〜い!たっか〜い!」

「そ、そうね」

アニスははしゃいだが

未来は落ち着きがなかった。

「未来は高いところが苦手でしたね」

「ち、違うわ!」

ジェイドの言葉を未来は慌てて否定したが

怯えた声で、全く説得力はなかった。

「はは。かわいいところもあるじゃないか」

「そうよ、未来。

誰でも苦手なことはあるわ」

「…ガイ…ティアまで…」

未来は恥ずかしくてうつむいた。


「…よかった。ここでも私に反応してくれたわ」

シュレーの丘の時のように、ティアが近づくと

セフィロトは起動した。

「やっぱり総長が封じてますか」

「そのようですね。

しかし…セフィロトが暴走?」

見上げながらジェイドは顔をしかめた。

「どういうこと?」

「なあ、赤いところを削り取るんだよな」

未来はジェイドに聞こうとしたが

超振動を発動させたルークに声が重なった。

暗号を超振動で消したルークは

ジェイドの指示通りに

『ツリー上昇。速度三倍。固定』

と命令を記入した。

難しい作業だったが

超振動を使えるルークにしかできない。

続いてシュレーの丘の第三セフィロトにも

ルークは同じ命令を書き込んだ。

すると地面が振動し始める。

「降下し始めたようですね」

「でも、念のため降下が終了するまで

パッセージリングの傍に待機していましょ。

それよりルーク、大丈夫?」

未来はジェイドに頷いた後

肩で息をしているルークを心配した。

「ありがとう、未来。

ちょっとしんどかったけど

そんなことも言ってられねえよ」

ルークがそう言うと揺れが収まった。

「完全に降下したようです。

パッセージリングにも異常はないですね」

「よかった」

ジェイドの言葉にルークは安心する。

「へへ、何かうまく行き過ぎて

拍子抜けするぐらいだな」

みんなはそんなルークに微笑んだが

ティアは表情が硬かった。

「ティア。

んな顔しなくても俺、もう暴走しねーって」

「ううん。そうじゃないんだけど…」

そう言ったティアは倒れてしまう。

「おい、大丈夫か!?」

ルークはティアに駆け寄り

ガイも同じことをしようとしたのか震えた。

「ごめんなさい、大丈夫よ。

体調管理も出来ないなんて

兵士として失格ね」

ルークに抱き上げられたティアは

無理に笑った。

「ティアのそう言うところは

同じ兵士として見習うべきことだけど…

もっと体の心配をしたほうがいいわ」

「あ、ありがとう。でも本当に平気よ」

未来の心配に

ティアは頷くことしかできない。

「それなら外に出ましょう。

魔界に辿り着いているのか

確認した方がいいですから」

そう言ったジェイドは

全員が外に出るのを見ていたが

立ち止まったままのガイを見て

ため息をついた。

「弊害が出ていると考えるなら

原因を探った方がいいですよ」

「え?ああ…そうだな」

ガイは力なく頷いた。

「ジェイド?」

「なんでもありません。さ、行きましょう」

不思議そうに見た未来の背中に

ジェイドは手を添えた。

「でも、さっきの警告は…」

「ここで心配しても、仕方がありません」

そう言いながら二人は歩き

ガイもつられたようにセフィロトを出た。


「間違いなく魔界だな」

ルークの言う通り、外には障気が漂っていた。

そして外殻大地に戻るためにも

アルビオールを操縦できるノエルとの合流先である

ケセドニアへ向かうことになった。

(どうか、そんなことにはなりませんように)

セフィロトの警告を

未来は信じたくなかった。


to be continued

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