第三十三話「崩落の序曲と皆無な緊張感」


船に乗るためにキムラスカ側へ行きたい一行は

国境をまたがっている酒屋へ入ってみた。

しかし扉の前に男性が立っていて

ここを通りたいなら合言葉を言え

と言われてしまう。

「通行料も取っているのでしょう。

後で国境警備隊に報告しておきましょうか」

「お、おどしても駄目だ!」

ジェイドに言われて反発したが

男性は怯えていた。

「ぐへへ。合言葉を買わないか?」

その時、背後から声が聞こえた。

「あ!おまえら!」

「あらん。いつかの坊や達かい」

そこにいたのは漆黒の翼だった。

「あ、あなた達!

イオン様を誘拐したり

こんなところででお金儲けしたり

何を考えてるの!」

「あはん。だってお金が大好きなんですもの」

未来の厳しい声に

三人は気にしないという様子だった。

「お金なら、私だって大好きよっ!」

アニスは変なところで威張った。

「オイオイ。それより漆黒の翼さんよ。

一体いくらで売るってんだ?」

呆れかえってガイが聞いた。

「七人でガスから…」

「ミュウもいますの!」

「八人ですガスから8000ガルドでやんスな」

ミュウの声にニヤリと男が笑った。

「呆れた商売ね」

「アホ。

おめーが余計なこと言うから

1000ガルド増えたぞ」

「みゅうゅぅぅぅ」

ティアはため息をつき

ルークはミュウを揺さぶった。

「払うのか?払わないのか?」

ピエロの格好をした男がルークに聞いた。

「高いよ」

「そうだな。

大体馬鹿正直に払うこともないと思うぜ」

ルークとガイは当然と言った。

「ここはまだマルクトですよねぇ?

大佐と未来

捕まえちゃってくださいよぅ」

アニスがジェイドと未来に頼った。

「だそうです。

ここを通してくれるのなら

見逃してあげてもいい

と思うのですが」

「見逃さないなら

どうなるかわかっているわよね?」

「未来、怖い…」

ジェイドはいつもの調子だったが

未来の声はいつもより低く

言い出したアニスは焦った。

しかし、漆黒の翼の三人は

戦争を始めたからそれを利用して金儲けしている

と言い張る。

「では憲兵を呼んできましょう」

「それでいいわよね?」

「待ちな」

ジェイドと未来が酒屋の外へ出ようとしたら

漆黒の翼の女性が、それを止めた。

「いいだろう。あんた達を通してやるよ。

その代わり

このことは誰にも言うんじゃないよ」

そう言って漆黒の翼は

悔しそうに去って行った。


船の手配を頼むためにアスターの屋敷へ行った。

そこでアスターからザオ砂漠とイスパニア半島が

地盤沈下を起こしていると聞く。

ケセドニアが崩落を始めたと一同は慌てるが

ジェイドは大地を安全に降ろせないかと提案し

セフィロトがあるザオ遺跡に行くことになった。


ケセドニアを出ようとしたとき

ルークが頭痛を起こし

アッシュがオアシスに来いと言ったと

ルークは説明した。

ナタリア以外はアッシュが何かするのではないか

と警戒したが

オアシスに立ち寄ることにした。


オアシスの譜石の前でアッシュは待っていた。

ルークに

なにか変わったことはないか?

と聞き

エンゲーブが崩落を始めたと知らせる。

ナタリアは必ず大地を安全に降下させるつもりなことを説明した。

それが本当ならパッセージリングは繋がっているため

崩落を始めたエンゲーブや戦場も

操作できるとアッシュは言う。

「ザオ遺跡のパッセージリングを起動させれば

すでに起動している

シュレーの丘のリングを動かせる?」

「本当に、そんなことができるの?」

ジェイドと未来は半信半疑だった。

「ヴァンはそう言っていた」

そう言ってアッシュは、その場を去ろうとした。

「アッシュ!どこへ行くのですか?」

名残惜しそうにナタリアが聞いた。

「俺はヴァンの動向を探る。



おまえたちがこの大陸を上手く降ろせなければ

俺もここでくたばるんだがな」

「約束しますわ。ちゃんと降ろすって!

誓いますわ」

ナタリアがアッシュに右手を差し出した。

「指切りでもするのか?馬鹿馬鹿しいな」

世界に絶対なんてないんだ。

俺は行くぞ。おまえらもグズグズするな」

そう言ってアッシュは去った。

「なになに?こっちもいい感じ?」

アッシュの姿が見えなくなると

アニスが意味がある笑みを浮かべた。

「こっちもって?」

「未来…ちょっといい?」

不思議そうに聞いた未来の手を

アニスは持って、みんなから離れたところまで

未来を連れて行った。

「ねえねえ、大佐とはどうなの?」

目を輝かせてアニスは聞いた。

「何かと思えば、そんな話?」

「そんなとは何よ♪」

未来はため息をついたが

アニスはさらに詰め寄った。

「わかったわ。確かに私はジェイドが好きよ」

「きゃっはー!やっぱり?!」

「大きな声を出さないで!」

未来の正直な気持ちを聞いて

アニスは大声を出してはしゃいだ。

オアシスにいる人達が未来とアニスを見ていた。

「あ、ごめん…でも告白しちゃいなよ〜」

「それは無理よ」

アニスの提案に、未来は首を横に振った。

「えええ!なんで?」

『もったいない』

とアニスの顔には書いてあった。

「今は任務中だしジェイドも困るでしょ?」

「未来は真面目だからね〜。

そんなこと気にしなくていいのに」

今度はアニスはがっかりとした顔をする。

「もう!この話は、もうおしまい!

みんなのところへ戻るわよ!」

「えー」

今度は未来がアニスの手を引いて

様子をうかがっていたジェイド達と合流した。


「さあ!ザオ遺跡に行くよ〜。

パッセージリング〜♪」

元気よくアニスはオアシスを出て

「緊張感が皆無ですわね」

ナタリアはため息をついた。

「はは、いいじゃないか」

ガイは笑い、アニスの後をついて行った。


to be continued

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