第三十話「開戦」


外殻大地では、戦争が始まっていた

軍人の未来達は平然としていたが

残虐な光景に、ルークは目を背けた。

「どうして…!

どうして戦いが始まっているのです!?」

悲痛そうにナタリアが叫んだ。

「これは…まずい。

下手をすると両軍が全滅しますよ」

ジェイドも難しい顔をする。

「あ、そうか。

ここってルグニカ平野だ。

下にはもうセフィロトツリーがないから…」

アニスが気が付き、ティアもうつむいた。

「これが兄の狙いだったんだわ。

兄は外殻の人間を消滅させようとしていたわ。

預言でルグニカ平野での戦争を知っていた兄なら…」

「両軍が戦っている大地を

丸ごと崩落させるってこと?!」

そう言いながら

信じられないという顔を未来はした。

「確かに効率のいい殺し方です」

ジェイドも淡々と言った。

「冗談じゃねぇ!」

ルークは焦り始める。

「戦場がここなら

キムラスカの本陣はカイツールですわね。

私が本陣へ行って、停戦させます」

腕を組んで、毅然とナタリアが言った。

「エンゲーブも気になるわ。

あそこは補給の重要拠点と考えられているはず」

ティアはエンゲーブのことを考え始めた。

「崩落前に攻め滅ぼされるってこと?

こわ…」

「そんなこと、させないわ!」

アニスは怯え

マルクトを愛している未来は決意した。

そこで、エンゲーブの様子を見る班と

カイツールで停戦を呼びかける班

に分かれることになった。

「エンゲーブへは

私と未来が行くべきでしょうね。

マルクト軍属の人間がいないと

話が進まないでしょう」

ナタリアとガイ、そしてアニスとイオン様はカイツールへ

ジェイドと未来は、エンゲーブへ向かうことになった。

ルークは少し迷って

お世話になったから

とエンゲーブへ行くことにした。

「ルーク…私はあなたと一緒に行きたいわ。

見てないと心配だもの」

「なんだよ、それ。

けど、ありがとうって言うべきだな」

ルークは同行を望んだティアに、笑みを見せた。

「ティアもルークと一緒に一番最初に訪ねたのが

エンゲーブだったものね。

気を引き締めて行きましょう」

未来がまとめると

ティアとルークとジェイドがうなずいた。


ナタリア組をカイツールへ降ろし

未来達はエンゲーブへ到着した。

急いでローズ夫人のもとへ向かう。

「大佐に中佐!

戦線が北上するって噂は本当ですか?」

ジェイドと未来を見て

ローズ夫人は慌てて聞いた。

「そうたやすく突破されはしないと思いますが…」

「とにかく

この村がきわめて危険な状態なのは確かです」

「どうしたもんでしょうか」

ローズ夫人は困り果てたが

安全なケセドニアまで逃げることになった。

そして

お年寄りや女性を優先的にアルビオールに乗せて

残された住民は

徒歩でケセドニアを目指すしかなかった。


「未来中佐!」

「え?!」

未来とジェイドがマルクト兵に話を通そうと

軍営にたどり着いた時だった。

一人のマルクト兵が未来に駆け寄ってきた。

「お会いできて光栄です!

自分は未来中佐に憧れて軍人になったのです!

一度、危ないところを助けていただいて…」

「え、えっと…」

憧れと言われ、未来は戸惑った。

しかしジェイドがせきばらいで兵士を止めた。

「そんな話をしている場合ではない。

徒歩でケセドニアへ向かうことになった。

護衛を頼みたい」

「は!失礼いたしました!」

ジェイドの言葉に兵士は慌てて軍営の中へと消えた。

「ジェイド、あの…ありがとう」

「全く、貴女は隙がありすぎる」

ジェイドは一度困った顔をしたが

すぐに軍人の顔へと戻った。


早速アルビオールに住人を乗せて

徒歩組もエンゲーブを出る準備を終えた。

「あれ?ローズさん?!」

しかしローズ夫人も男達の中にいて

未来は驚いた。

「ああ、未来中佐…」

「どうして?女性なのに」

「村を取り仕切る私が

飛行艇には頼れませんよ」

ローズ夫人は力強く笑った。

「そう、ですか…。

本当は乗っていただきたかったのですが

もうアルビオールは離陸してしまいました後ですし…」

「いいんです、決心はついたのですから。

それに未来中佐も女性じゃないですか」

平気だと言うようにローズ夫人は早歩きをして

未来も同じように歩いた。

「未来は軍人です。大丈夫ですよ」

目の前を歩いていたジェイドが

歩きながら言った。

「そうです!

疲れたなら言ってくださいね!

一応、治癒術も使えますから!」

「ありがとうございます、中佐」

未来とローズ夫人は笑いあった。


「とにかくみんなを守り抜こう」

ルークがそう言って歩き出し

みんなも後に続き村を出た。

住民が戦場を進むという無謀な行動を

未来達は始めた。


to be continued

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