第二十九話「シュレーの丘」


ユリアシティの入り口には

テオドーロ市長が待っていた。

そしてセントビナーの住民は

ユリアシティで保護されることになり

マクガヴァン元帥はテオドーロ市長に続き

歩き始めた。

しかしルークの目の前で足を止めた。

「ルーク。あまり気落ちするなよ」

「え?」

いきなり名前を呼ばれ、ルークは驚いた。

「ジェイドは滅多なことで人を叱ったりせん。

先ほどのあれも

おまえさんを気に入ればこそだ」

「元帥!何を言い出すんですか」

マクガヴァン元帥がルークに微笑みながら言うと

ジェイドが慌てた。

しかしマクガヴァン元帥は

ジェイドの行動は

ルークを気に入ればこそだと言い残し

ユリアシティの中へと歩いて行った。

「ジェイド…」

「元帥も何を言い出すのやら。

私も先に行きますよ」

一度見捨てられたルークは喜んだが

ジェイドはルークを見ずに歩き始める。

「はは。図星らしいぜ。

結構可愛いトコもあるじゃねぇか

あのおっさんも」

ジェイドの行動にみんなが笑い

「さすがのジェイド坊やね」

未来も微笑んだ。

「君は本当にそのあだ名が気に入ったんだな」

ガイはもう一度笑い

ジェイドを追いかけるように歩き出した。


「単刀直入に伺います。

セントビナーを救う方法はありませんか」

会議室に全員が座り

テオロード市長にルークが尋ねた。

テオロード市長は厳しい顔で語り始めた。


ユリアが使ったとされる

『ローレライの鍵』

があれば可能性はあるが

存在するかすら怪しいものに頼るわけにもいかない。

セフィロトは

『パッセージリング』

という装置で制御されている。

セフィロトツリーを復活させれば

泥の海に浮かせるぐらいなら

可能かもしれない。

セントビナーと一緒に崩落した

と思われるシュレーの丘に

セフィロトがあり

操作には第七音素が必要らしい。


「それなら俺達の仲間には

四人も第七音素の使い手がいるじゃないか!」

それまで話を聞いていたガイは

嬉しそうに言った。

「私とティアとルークと未来ですわね」

「うまくいくかしら?」

名前を呼ばれた一人の未来だったが

セフィロトを操作できる自信はなかった。

「やってみないとわからないでしょう」

隣に座っていたジェイドが励ますように

未来に言った。


シュレーの丘にあるセフィロトへたどり着き

ユリア式封咒を解く必要がある

とイオン様が説明をした。

「時間がない。

封咒は三つあるから

手分けして解呪をしよう」

「ええ、それがいいわ」

ルークの提案にティアも頷いた。

「はーい!

イオン様と私はもちろん一緒だけど

他のメンバーはアニスちゃん的には

大佐と未来が一緒がいいと思いまーす♪」

アニスが手を挙げて楽しそうに言った。

「やー、アニス。気がききますね」

「え?どういうこと?」

「メジオラ高原でもそうだったが

戦闘の相性がいいからか?」

ジェイドは喜んで

そんなジェイドを未来とルークは

不思議そうに見た。

「本当、お前達は鈍感だよな」

ガイは苦笑した。


「この解呪、難しいわね」

「おや。

未来は頭がきれる

という評判を聞いていましたが?」

本当にジェイドと未来は二人で歩き

そんな会話をした。

先程から音素を集めたりそれを並べたりを繰り返していた。

「そうなの?

確かに作戦を立てるのは得意なほうだけど

ここはまるで…」

未来がこぼした、その時だった。

「未来!!」

「え?!」

ジェイドがいきなり叫び、未来の手を引く。

そのまま二人は抱き合ったまま、倒れた。

「どうしたの?!」

「魔物です!

危うく貴女が下敷きになるところでした」

そう言ったジェイドは立ち上がり

槍を腕から取り出した。

しかし未来は呆然としたままだった。

(両方緊急事態だったとは言え

また抱きしめてくれた…)

未来は自分の鼓動が高鳴るのを感じた。

「未来?いきますよ!」

「え、ええ!」

未来は慌てて短剣を構えた。

自分の中に芽生えた気持ちを紛らわすように。


「二人共、遅いよ〜」

「お待ちしておりましたわ」

そう言ったアニスとナタリアだったが

その顔はにやけていた。

「ごめんなさい、それより…」

未来達が合流する時には

セフィロトは起動していた。

しかしジェイドが言うには

ヴァンが制御できないように弁を閉じているらしい。

そこでルークが超振動で弁と暗号を消すと

記憶粒子が復活し

セントビナーが沈むのを回避できた。

喜んだ一同だったが

「いいえ、まだ危機はなくなってないわ」

未来がセフィロトを見て顔をしかめた。

「なんでだ、未来?」

「あれを見て」

ルークに聞かれて未来が指さした先には

このセフィロトは

ルグニカ大陸のほぼ全域を支える

と書かれていた。

つまりエンゲーブにも

崩落の危機が迫っているということになる。

「早くエンゲーブへ!」

全員がアルビオールに急ぎ

アルビオールはタルタロスと同じように記憶粒子に乗り

外殻大地へ戻ることにした。


「ティア?」

「え?!」

アルビオールの中でうつむいていたティアが

いつもとは違う気がして未来は声をかけた。

「どうしたの?顔色が悪いわ」

「そ、そんなことないわ。疲れただけよ」

ティアはそう言ったが

「俺も心配なんだ、ティアは強がるからな」

ルークも心配そうにティアを見た。

「そうよ。疲れたなら、治癒術を…」

「ありがとう、未来。

でも大丈夫よ。

それより、もうすぐ外殻大地にあがるはず…」

ティアがそう言ったとき

「外殻大地に上昇します!」

ノエルが言って

アルビオールは太陽に照らされた。

「あれは…!?」

しかし全員が外を見て絶句した。


to be continued

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