第二十八話「初めての叱咤」


ノエルはセントビナーまでアルビオールを急がせたが

魔界に充満している障気が視界を悪くした。

「早くセントビナーにつかないかな」

「ルーク落ち着いて。

あなたが焦ると、取り残された人々も混乱するわ」

落ち着かない様子のルークを

未来がなだめた。

「けど…!」

「ルーク!未来の言う通りです」

なおも落ち着かないルークに

ジェイドも注意をした。

「…わかった」

ルークはしぶしぶ下を向き

落ち着くように深呼吸をした。


「マクガヴァンさん!みんな!

大丈夫ですか?」

「おお、あんた達。この乗り物は…」

アルビオールから降りたルーク達を見て

マクガヴァン元帥は驚いた。

「元帥。話は後にしましょう。

とにかく乗ってください。みなさんも」

ジェイドの言われたとおりに

取り残された人々はアルビオールに搭乗する。

人数は辛うじてだが

全員がアルビオールに乗ることができた。


アルビオールがセントビナーから離陸してしばらくすると

セントビナーが完全に魔界に崩落した。

「助けていただいて感謝しますぞ。

しかしセントビナーはどうなってしまうのか…」

マクガヴァン元帥は自分の街を見て

つらい顔をした。

ティアは

このままではホドのようにマントルに沈むだろう

と説明をした。

「ホド…そうか…これはホドの復讐なんじゃな」

マクガヴァン元帥の言葉に、全員が沈黙をした。

席に座っていたジェイドも

隣に座っていた未来も

ただ黙っていた。

しかしルークは、ヴァンを問いただしてでも

セフィロトをどうにかしようと言い出した。

「ルーク、何度も言うけれど…落ち着いて。

本当に辛いのは

マクガヴァンさん達なのだから」

未来が立ち上がり、ルークに歩み寄った。

「そうだぜ、ルーク。

お前の気持ちもわかるが…」

「わかんねーよ!

ガイにも、未来にも、みんなにも!」

「ルーク…」

もう一度全員は黙ることしかできなくなる。

「アクゼリュスを滅ぼしたのは俺なんだからさ!

でもなんとかしてーんだよ!」

「ルーク!いい加減にしなさい!!

焦るだけでは何もできませんよ」

ジェイドがルークを見ずに声を荒げた。

「…ジェイド」

未来は初めてジェイドが叱ったのを見た。

そしてアルビオールはユリアシティに向かい

ティアのお祖父様に協力を依頼することにした。

「ちょっと、失礼します」

叱るのをやめたジェイドは

落ち着くために席を外した。

未来は迷ったが、ジェイドを追うことにした。


「ジェイド、待って」

未来の声が廊下に響いた。

「ユリアシティで…

貴女にフォミクリーのことを言い当てられたのでしたね」

ジェイドは未来に背を向けながら呟いた。

「あ…ごめんなさい」

「何故、謝るのです?」

不思議そうにジェイドは振り返った。

「ジェイド…フォミクリーについて話す時は

いつも辛そうな顔をするから」

未来はそう言ってうつむいた。

「でも安心して!

私はあなたを決して軽蔑しないから。

ルークだって、きっと許してくれるはずだから」

今度はジェイドを見て

未来はきっぱりと告げた。

「そう、でしょうか…」

ジェイドはメガネを押さえる。

「そうだと私は信じている。

ケテルブルクで言ったでしょ?

あなたは独りじゃないわ」

「未来…ありがとうございます」

「いいのよ。だって、仲間なんだから」

「そう、ですね…仲間ですね…」

未来にお礼を言ったジェイドだったが

その表情は再び暗くなった。

「ジェイド?」

「なんでもありません。

ここは冷えます、操縦席に戻りなさい」

もう一度未来に背を向けて

ジェイドは強く言った。

「ごめんなさい、変なこと言ったかしら?」

未来は慌てて謝ったが

「いいえ、貴女は正しい」

ジェイドは肯定をした。

「そう…」

それ以上なにかを言ってはいけない気がして

未来は言われた通りに操縦席に戻った。


to be continued

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