第二十七話「アルビオール」


シェリダンに着いて、ガイを先頭に

浮遊機関を研究している

イエモン、タマラ、アストンを訪ねた。

しかしアルビオールはメジオラ高原に墜落し

操縦士のギンジが閉じ込められてしまったらしい。

救援隊も軍が開戦前で出払っている。

「メジオラ高原は魔物の巣窟よ。

救援隊が逆に遭遇しかねないわ」

未来が考え込みながら言った。

「そうですね、民間人には厳しい」

ジェイドもそう言うと

イエモン達は困ったようにうつむいた。

「だったら俺が行くっ!」

「よく言いましたわ、ルーク」

ルークは意気込んで言い、ナタリアが頷く。

「私達の中には軍事訓練を受けた者もいます。

任せていただけませんか?」

ティアは未来とジェイドを見ながら聞いた。

「その代わりじゃないですが

俺達が浮遊機関を持ち帰ったら

二号機があれば貸して欲しいんです。

浮遊機関は二つ発掘されたんですよね」

「よく知ってるな、その通りだが…

二号機は未完成じゃ。

駆動系に一部足りない部品がある。

戦争にあわせて

大半の部品を陸艦製造にまわしてもうた」

イエモンは困ったように言った。

「タルタロスも元は陸艦です。

使える素材があるなら使ってください」

「ジェイド、いいの?

それじゃ、最悪タルタロスは航行不能になるわ」

「今は緊急事態です、未来」

同じマルクト軍である未来は焦ったが

ジェイドは提案を変えず

イオン様に

イエモン達をタルタロスへ案内してくれるように頼んだ。

「我々がもう一つの浮遊機関を回収する間に

二号機を完成させてほしいのです」

「僕は承知しました。あとは…」

「部品さえあれば

わしら、命がけで完成させてやるぞい」

そう言ったイオン様とイエモンとタマラはタルタロスへ向かい

残ったアストンがルークに発射装置を渡した。

「この発射装置で

アルビオールを固定してから崖下へおろすんじゃ。

あそこは酷い風が吹いて危険じゃからな」

「でも使い方が…」

ルークは扱いが全く分からなかった。

「音機関なら、俺に任せとけ。

それにジェイドもわかるだろうし」

ガイが安心させるように言ったが

「さあ、どうでしょうね」

ジェイドはいつも通りだった。

「食えないおっさんだよ。ホント」

「頼んだわよ、ジェイド」

ガイは苦笑いをした

、未来はジェイドを信頼し

メジオラ高原に向かった。


「あれがそうね」

「あれ…なんかやばそう。

今にも落ちそうじゃん」

メジオラ高原に着くと

アルビオールは辛うじて崖にとどまっていたが

アニスの言う通り

いつ墜落してもおかしくなかった。

「まずいですね。

下手をすると

私達がたどり着く前に落ちるかもしれません」

「操縦士の命も危ういわね」

ジェイドと未来は顔をしかめた。

「大変ですの!」

ミュウもあわてた声を出す。

「発射装置は

機体の両側から打ち込まなきゃならない。

二手にわかれよう!」

ガイが発射装置のひとつをルークに渡した。

「ルーク、あなたは誰と行きたいの?」

「え?俺?」

ティアに聞かれてルークは少し考えたが

すぐに未来を見た。

「未来とジェイドに一緒に来てほしいな。

発射装置の扱いはガイとジェイドしかわからないし

なにより、二人は息ピッタリだしな」

「私ですか?やれやれ」

「いいわ、行きましょう」

指名された二人も了承をし

「へ〜その二人を選ぶんだ」

アニスは意味深にニヤニヤとした。


時間がないため魔物から逃げながら

三人はアルビオールに向かった。

「な、なんだ?」

しかし大きな足音が高原に響いた。

「魔物だわ…かなり近い」

未来は短剣を構えた。

「後ろです!」

ジェイドが言った通り

背後から巨大なドラゴンが近づき

強制的に戦闘になった。

「うおおおお!」

ルークがドラゴンに斬りかかる。

「未来!」

「わかってる」

一方でジェイドは詠唱を始め

未来はジェイドの時間を稼ぐために

譜術障壁を出現させた。

「光の鉄槌を!リミテッド!!」

譜術障壁を出現させたまま

未来はリミテッドを放つ。

集中力も強い未来だからできる

防御と攻撃だった。

「雷神剣!」

「タービュランス!!」

ルークの剣術と

詠唱を終えたジェイドの譜術が見事にあたり

ドラゴンは倒された。

「急ぎましょう!」

ジェイドは駆け出し

ルークと未来も後に続いた。


「間に合った!」

三人は墜落する前に

アルビオールの近くまでたどり着き

ガイもすでに反対側に立っていた。

「そちらの準備はいいですか?」

ジェイドが発射装置を構えた。

「いつでも大丈夫さ!」

ガイも同じように構える。

「行きますよ!」

ジェイドとガイが発射したロープが

アルビオールにかかり

安全に崖から降ろすことができた。

「助けてくださってありがとうございます」

操縦士のギンジが

アルビオールから出てきてお礼を言った。

「時間が惜しいわ。話は後にしましょう」

未来の言葉にみんなが頷いた。


「ありがとうございました!

おいらは先に浮遊機関を届けてきます」

シェリダンに着き

ギンジはもう一度頭を下げて

イエモン達のところへ走っていった。

しかし未来達が研究所に入ろうとした時だった。

「おまえたちか!

マルクト船籍の陸艦で

海を渡ってきた非常識な奴らは!」

キムラスカ兵が二人、走ってきた。

「む?おまえらはマルクトの軍人か!?」

未来とジェイドを見て

兵士はさらに警戒をする。

「まずい!」

急いで作業所に入り

ガイが扉をおさえて兵士の侵入を阻止した。

「おお!帰ってきおった!」

イエモンが笑顔で出迎え

浮遊機関を取り付けていると説明した。

ただタルタロスから部品を大量に外したため

未来の予想通り

タルタロスは航行不能になってしまったらしい。

時間がないため

外の兵士はイエモン達に引き受けてもらい

未来達はアルビオール二号機に乗った。

そこで

ギンジの妹である二号機専属操縦士のノエルが待っていた。

「さあ、行きましょう!」

ノエルがそう言って

アルビオール二号機を発進させた。


to be continued

前のお話 次のお話

TOPへ戻る

しおりを挟む