第九話「私の愛しい不安」


ジェイドの屋敷で

私は読み書きの練習を

していたのだが…

「ジェイド…何してるかな?」

不意にジェイドに会いたくなった。

そして時計を見ると

もうすぐ正午だ。

「よし!ランチに誘おう!」

私は立ちあがって

そう独り言を言った。


だけど…どうしよう?

ジェイドは

「いつでも執務室に来ていいのですよ」

と言ってくれてたけれど

一人で軍の基地に入るなんて

初めてだ。

ジェイドは

警備兵に私の事を

伝えてくれるらしいけど

やっぱり緊張するよ。

「カーティス大佐…」

その時、聞き間違いのない

名前が聞こえた。

しかもそれは女性の声で

泣いているようだ。

慌てて声のした右を見ると

ジェイドと知らない女性が

向き合っている。

しかも女性は何度も涙をぬぐい

ジェイドはそんな彼女の

背中を何度も撫でていた。

「っ!!」

私はショックで息をのみ

その場を逃げるように

走り出した。


「はあ…はあ」

全速力で走ったから

すぐに息が上がってしまう。

そして考え込んだ。

誰?あの女性。

ジェイドとどんな関係?

そもそもなんでジェイドは

私を好きになってくれたの?

疑問が次々に浮かんでくる。

だけどそれは

ジェイドの事が好きだからだ。

そう思うと不安が

段々愛しく思えてきた。

「未来。見つけましたよ」

背後から声がした。

「じぇ、ジェイド!

さっきの女性は?

もういいの?」

そう聞かずにはいられなかった。

「ああ、紹介していませんでしたね。

彼女は私の副官です。

仕事で大きなミスをしてしまい

話を聞いていたんです」

「な、なんだ…」

ジェイドの心配に

不安が消えていく。

やっぱり不安は

愛しくてもない方がいい。

「嫉妬しましたか?」

「うーん…」



A.「少しだけ」
B.「大丈夫」

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