第二十六話「救出へ」


第一師団の様子を見て

未来は謁見の間に戻ろうとした。

部下に愛されていた未来の無事の帰還に

涙を流す兵士までいた。

「ジェイドはもう謁見かしら…ん?」

未来は謁見の間から漏れてくる声を聴いた。

控えていた兵士も焦ったが

注意はしなかった。

「陛下!からかうのは止めてください」

「そう言うな。

いやー、お前がな。

あんな顔をするなんてな」

「ですから、そのようなことは…」

「ない、と言い切れるか?

ま、いい女だよな未来は」

(私の名前?!)

自分の名前が出て

話の内容がさらに気になったが

「未来!」

「ルーク?!」

ルーク達の登場により

それ以上は聞かれなかった。

「あれ?イオン様とアニスとガイは?」

そこには三人しかいず

未来はいないメンバーの名前を挙げた。

「ガイがカースロットによって

ルークを攻撃したの。

ラルゴとシンクが待ち伏せしていて…」

「今、イオンが解呪をしている。

ガイは、俺を殺したいほど恨んでいたんだ」

ティアとルークは、辛そうな顔で説明をした。

「どういうこと?」

「説明は謁見が終わってからにしてください」

さらに追及した未来を

謁見の間から出てきたジェイドが止めた。

「みなさん、中へ。

ピオニー陛下がお待ちです」

未来の事は気にせずに

ジェイドはルーク達を謁見の間へうながした。


「よう、あんたたちか。

俺のジェイドと未来を連れまわして

帰しちゃくれなかったのは」

「は?」

いきなりの陛下のおどけた様子に

ルークは戸惑いを隠せなかった。

「こいつ封印術なんて喰らいやがって

使えない奴で困ったろう?

未来がフォローしなくちゃ

どんなことになっていたやら」

「いや、そんなことは…」

「陛下。客人を戸惑わせてどうされますか」

さらに困惑したルークを見て

ジェイドは咳払いをした。

「ハハッ、違いねぇ。

アホ話してても始まらんな。

本題に入ろうか…」

そう言って真剣な皇帝の顔になったピオニー陛下は

キムラスカからの圧力によって動けないマルクト軍のかわりに

ルーク達に救援を要請した。

そして玉座を離れ

ルークの目の前まで歩み寄った。

「俺の大事な国民だ。

救出に力を貸して欲しい。頼む」

ルークの肩に両手を乗せて

ピオニー陛下はまっすぐにルークを見つめた。


「やれやれ、大仕事ですよ。

一つの街の住人を全員避難させるというのは」

謁見の間から出てきたジェイドは、そう呟いた。

「セントビナーは何万もの住民がいるものね」

「未来、どうすればいい?

俺、何をしたらいいんだろう」

「ルーク、落ち着いて。

陛下のお話にもあったけれど

アクゼリュス消滅の二の舞を恐れて

我が軍が街に入るのをためらっているの」

詰め寄ったルークに

未来は慌ててもう一度説明した。

「まずは我々がセントビナーへ入り

マクガヴァン元帥にお力をお借りしましょう」

「そうね、ジェイド坊や」

マクガヴァン元帥が言っていたあだ名を

未来は思い出して呼んだ。

「未来〜何か言いましたか?」

しかしジェイドの裏がありそうな笑いに

「な、なんでもないわ

さあ、ガイの様子を見に行くのだったわね…」

未来はごまかすしかなかった。


解呪が済んだガイは

ホドの生まれで戦争に巻き込まれたと説明した。

攻め入ったファブレ公爵を恨んでいたから

ルークを憎んでいた時もあったらしい。

「それは復讐のためですか?

カイラルディア・ガラン・ガルディオス」

「ジェイド、いつの間に…」

ジェイドはこっそりと調べていたらしく

ガイの本名を知っていた。

「まあ、全くわだかまりがないと

言えば嘘になるが

もう少し一緒に旅させてくれないか?」

そう言ったガイとルークは誤解を解き

ガイ達も合流したメンバーで

セントビナーへと急いだ。


セントビナーのマクガヴァン元帥に話を通し

住民の避難を急ぐ。

そんな中

未来が誘導しているところで男の子が転んだ。

「大丈夫よ」

「ありがとうございます」

未来はその子に治癒術をかけて

母親がお礼を言った。

「さあ、街の出口へ…」

未来がそう言いかけて街の門をみると

ジェイドとティアが詠唱をしていた。

「二人とも、どうしたの?」

「未来!危ない!」

「逃げなさい!」

ティアは走り寄ろうとした未来を止め

ジェイドは近くにいた住民に向かって叫んだ。

その時、巨大な譜業が出現する。

「な、何だ!?」

譜業の下敷きになりそうだった子供を

ルークが間一髪で助けた。

「これって…」

「ようやく見つけましたよ、ジェイド!」

未来が言い終わらないうちに

椅子に乗ったディストが誇り高そうに言った。

「この忙しいときに…

昔からあなたは空気が読めませんでしたよねぇ」

「何とでも言いなさい!

それより導師イオンを渡していただきます」

「断ります。それよりそこをどきなさい」

ディストは楽しそうに

ェイドは呆れてそんなやり取りをした。

「へぇ?

こんな虫けら共を助けようと言うんですか?

ネビリム先生のことは諦めたくせに」

「!!?」

「くっ…おまえはまだそんな馬鹿なことを!」

聞き捨てならない名前に

未来とジェイドが反応した。

「さっさと音をあげたあなたに

そんなことを言う資格はないっ!

さあ導師を渡しなさい!

行け、カイザーディスト2号!!」

それまで動かなかったカイザーディスト2号が

主の命令通りに動いた。

ジェイドは船上の時のようにスプラッシュを唱えようとしたが

「甘い!」

詠唱中のジェイドに

カイザーディスト2号のドリルが当たった。

「ジェイド!」

急いで未来が駆けつけ、治癒術をかける。

「ありがとうございます、未来」

カイザーディスト号を見ながらジェイドがお礼を言った。

未来も同じように対峙し

譜陣を足元に出現させる。

「許さない!」

冷たい風が突然現れ

未来の短剣に集まり始めた。

「氷の欠片よ!

我が命に従い、逆らうものに終焉を与えよ!!

アイシクルストーム!!」

未来の秘奥義が見事に当たり

カイザーディスト2号は煙を上げて動かなくなり

ディストは悔しそうに去って行った。

「すごい!

未来ってば、強すぎ…て、うわ〜!!」

未来をほめようとしたアニスだったが

次の瞬間には悲鳴をあげた。

セントビナーが崩落を始めたのだ。

「きゃあ!」

「未来!!」

断崖に取り残されそうになった未来を

ジェイドは手を引いて救い出した。

「ありがとう、ジェイド」

「礼には及びません。それより…」

ジェイドは、みんなは

セントビナーが崩落していくのを

見つめることしかできなかった。

「くそ!マクガヴァンさん達が!」

ルークが焦った。

今にも崩落しそうな大地には

まだ多くの住民が残されていた。

「待って、ルーク!

それなら私が飛び降りて譜歌を詠えば…!」

「それなら私も行くわ!

今の崩落で、怪我をした人もいるはず!」

「二人とも待ちなさい。

飛び降りるには距離がありすぎます」

今にも飛び降りそうなティアと未来を

ジェイドが止めた。

そしてガイの発案で

飛行実験をやっているらしいシェリダンへ行き

浮遊機関を借りることになった。

「みなさん!待っていてください!!

必ず助けますから!」

マクガヴァン元帥達に未来はそう叫んだ。


to be continued

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