第二十一話「集結」


未来は急いで街道を歩いた。

早くしないと

本当に戦争が始まってしまう。

「ガイはルークを迎えに行くと言っていたわね」

「ええ、入れ違いにならないといいのですが…」

ジェイドがそう言っている間に

アラミス湧水洞に到着した。

トゥェ レィ セィ クロァ リョウ トゥェ セィ

「この歌声は、ティア!?」

洞窟から清らかな声が聞こえた。

「間に合いましたか。

しかし…余計な方もいらっしゃるようですね」

「え?それって…」

「おわっ!?」

「未来?ジェイド!?」

未来が言い終わらないうちに

ルークとガイが洞窟から出てきて

待っていた二人に驚いた。

特に未来は女性のため

ガイは不自然に飛び跳ねた。

「大佐に未来、どうしてここに…」

後ろを歩いていたティアも

二人を不思議そうに見た。

「ガイに頼み事です」

「ここでルークを待つと言っていたので

捜しに来たというわけ」

「俺に?」

説明をするジェイドと未来に

なおもガイは意味不明だという顔をした。

「イオン様とナタリアが

モースに軟禁されました」

「何だって!?」

「おや、ルーク。

あなたもいらっしゃいましたか」

ジェイドは初めてルークに気がついたフリをしたが

(さっきの戦闘の音で気が付いていたくせに…)

そう思った未来は見抜いていた。

「いたら悪いのかよ」

「いえ、別に」

ジェイドはルークを無視するように

ガイとティアだけを見た。

「それより囚われた二人を助け出さないと

まずいことになります」

「近くにマルクト軍がいないので

ここはガイに助力をしてほしいの」

未来がそう願い出た。

「まずいことって何が起きるんだ」

「アクゼリュスが消滅したことをきっかけに

キムラスカは開戦準備を始めたと聞いています」

「なにっ?!」

アクゼリュスを崩落させたルークが一番驚き

動揺した。

「おそらくナタリアの死を

戦争の口実に考えているはずよ。

両国は、何故アクゼリュスが消滅したか

わかっていないのだから」

「イオン様もこれを警戒し教団に戻ったところ

捕まったようです」

洞窟から出てきたルーク達にも

二人の緊張は伝わってきた。

「よし、ルーク。二人を助けよう」

「…ああ」

ガイに肩をつかまれ、ルークは返事をしたが

「まあ、そうですね。

迷子になったりして足を引っ張らないように

お願いしますよ」

ジェイドにきつい言葉をかけられた。

「ジェイド…

いくらなんでも、ルークがかわいそうよ」

「やれやれ。

また一緒に行動することになるとはね」

未来に注意されたジェイドだが

まだルークへの嫌味はおさまらない。

「ルーク。

一度失った信用は、簡単には取り戻せないわ」

そんなジェイドを見て

ティアも仕方がないという顔をした。

「わ、わかってるよ」

ルークは言い訳をせずに耐えていた。


南に歩いていくと、大きな街が見えてきた。

「ご主人様!あれがダアトですの?」

「俺は知らないよ。そうなのか?」

「ええ、そうよ」

ルークに聞かれ、ティアは頷いた。

「あの教会に二人が軟禁されているの」

「戦争をくい止めることができる

可能性を持った二人ですからね。

モースとしても

ダアトから外に出したくないのでしょう」

未来とジェイドの説明に

「俺たちで助けてやろうぜ」

ガイは再びルークの肩をつかみ

一緒に歩き始めた。

「アニスが教団の様子を探っています。

街で落ち合えればいいのですが」

「でも、アニスは行動派だからね。

どこかで待っていた方が得策かも」

そう言いながら未来達は

ルークとガイの後ろを歩いた。


ダアトの協会の前にたどり着いた時だった。

「うおおおおっ!?」

「アニス!」

アニスが突然走ってきた。

「えええ、ルーク?

なんでおぼっちゃまが

こんなところにいるの!?」

アニスはルークを見て驚いた。

「アニス。

とりあえず

イオン様奪回のための戦力は揃えました。

お二人はどうされてます?」

「イオン様とナタリアは

教会の地下にある

神託の盾本部に連れていかれましたっ!」

深刻そうにアニスはジェイドに説明をした。

「本部は神託の盾の人間しか入れないわ」

「侵入方法はないのか?

なんとしてでも二人を助けないと

本当に戦争が始まっちまう」

ガイが初めて焦った。

「ティア。

第七譜石が偽物だった

という報告はまだしていませんね」

「アクゼリュスの偽りの譜石ね」

「そうです」

未来にジェイドが頷いた。

アクゼリュスの第七譜石らしき物は

ティアをおびき寄せるための罠だった。

「そこで私達を第七譜石発見の証人として

本部へ連れて行くことはできませんか?」

「わかりました」


そうして再び集結した六人は

たとえ預言に反したとしても

戦争を止めるために歩き始めた。



to be continued

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