第二十話「開戦の噂」


アッシュは約束通り

アニスとイオン様をダアト港まで送り届けた。

「そこのマルクトの軍人さん達

タルタロスは返すぜ」

一番最初にタルタロスを降りたアッシュは

港を出ようとした。

「我が軍の陸艦を使いまわしたわりには偉そうね」

「ふん!」

未来の嫌味を鼻で笑い

アッシュは去って行った。

「さっきも思ったけれど

アッシュとルークって傲慢さがそっくりね」

「そうですねぇ、完全同位体ですから」

タルタロスを降りた未来とジェイドは苦笑して

イオン様とアニスとナタリアも外へと出た。

「はー。

やっとダアトに帰ってこれましたね、イオン様」

「そうですね、長い旅でした」

ダアト港に着いたタルタロスから

出てきたアニスは背伸びをし

イオン様も安心したようだった。

「それでは、私達はこれで…」

「おい、見ろ!大きな陸艦だ!」

イオン様が港からダアトへ向かおうとした時

港の行商人らしき男性が

タルタロスを見上げた。

「本当に戦争が始まるんじゃねーか?

ナタリア王女が亡くなったわけだし…」

「なんですって?!」

名前を呼ばれたナタリアは、当然驚いた。

「なんだよ、あんたたち…」

「アクゼリュスが崩壊したのを知らないのか?

そこで王女が亡くなり

キムラスカが開戦しようとしている

って噂があるんだよ」

不審がった二人だったが

説明をして去って行った。

「そんな…」

「未来、そんなに心配しなくても大丈夫です」

イオン様は未来に安心させるように微笑んだ。

「僕が教団に戻り、止めるように通達をだします」

「お待ちになって。

それなら、私も同行させてください。

私が行けば

亡くなったのは誤報とわかるでしょう」

ナタリアが毅然とした。

「それがいいでしょう」

「ジェイド、私達はピオニー陛下に報告を!」

未来は焦り始めた。

「落ち着いてください、未来。

まずは

魔界に落ちたタルタロスを整備しなければ…」

イオン様を見送ったジェイドは、船橋へ向かい

未来もそれに続いた。


「やはり魔界の沼が入り込んでますね」

機関部を見て、ジェイドが顔をしかめた。

「最新の陸艦でも酷使をしてしまったでしょうね。

グランコクマに帰るのも無理かしら?」

「走行してみないとわかりません。

どこかで修理ができれば…」

「大佐!未来!」

ジェイドが、機関部を覗き込んだ未来に言いかけた時

聞きなれた声がした。

アニスだ。

「どうしたんです、アニス」

「イオン様達とダアトへ行ったんじゃ…」

「それが…私が目を離したすきに

ナタリアとイオン様が

神託の盾にさらわれちゃったの!」

アニスは焦り、その場で早い足ふみをした。

「それって…!?」

「戦争を止めることができる二人が

モースに捕らえられたのでしょう」

しゃがみ込んで機関部を見ていたジェイドは

立ち上がった。

「アニスは先にダアトへ行き

動向を探ってください。

私と未来は、戦力を確保しましょう」

「はい!」

アニスは頷くと、急いでタルタロスを出て行った。

「確かに私達だけでは心細いけれど

誰に頼むの?」

「ガイです。

アラミス湧水洞へ迎えに行きましょう」

ジェイドはタルタロスの整備を中断した。


to be continued

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