第十八話「ジェイドとフォミクリー」


タルタロスが西に進んでいくと街が見えてきて

そこにジェイドがタルタロスを入港させた。

「これがユリアシティ?」

「障気を避けるフィールドがあるのね」

アニスと未来が周りを見渡しながら言った。

「ええ。奥に市長がいるわ。

行きましょう」

ティアがそう言い、みんなが歩き出したが

ルークは立ち止まったままだった。

「ルーク…」

「彼のことは、ティアに任せましょう。

きっと、すぐについてきますよ」

ルークを心配した未来だったが

ジェイドに言われて奥へと進んだ。


ティアの祖父でもあるテオドーロ市長は会議中で

会議室の隣の部屋で

未来達は待つことになった。

そこにアッシュがやって来た。

ルークは気を失い、ベッドに運ばれたらしい。

「ルークがアッシュのレプリカ?!」

「そうだ、ヴァンがフォミクリーを使った」

全てを説明したアッシュに

未来とジェイド以外は

信じられない

という顔をした。

「それより、外殻大地に戻るぞ!」

「しかし、どうやって…」

アッシュとナタリアがそう話していると

ジェイドが部屋を出て行った。

「待って、ジェイド…」

未来も慌てて

追いかけるように部屋を後にした。

どうしても、ジェイドに聞きたいことがあった。

未来が部屋を出ると

ジェイドは立ち止まって待っていた。

「ジェイド…あなたは知っていたのでしょう?

ルークがレプリカだって」

「…ええ」

観念したようにジェイドは頷いた。

「それは…

あなたがフォミクリーを作ったからじゃないの?」

未来はその事実を、デオ峠から予感していた。

「…よく気がつきましたね」

ジェイドの顔に驚きはなく

あきらめていたようだと未来は感じた。

「未来…あなたは私を軽蔑しますか?」

「まさかっ!」

未来が慌てて否定すると

アッシュがやって来た

「こんなところで何をしている?」

「…いいえ、何も。

それより先ほどの、外殻大地に戻る作戦ですが

アクゼリュスのセフィロトを利用すれば

行けるかもしれません」

「どういうこと?」

「最低限の移動だけですがね」

未来の問いかけに、ジェイドは説明を始めた。

「一時的にセフィロトを活性化し

吹き上げた記憶粒子(セルパーティクル)を

タルタロスの帆で受けます」

「記憶粒子に

タルタロスを押し上げてもらうってことね?」

「その通りです」

ジェイドは未来に頷いたが

アッシュは黙ったままだった。

「どうしたんです

苦虫をかみつぶしたような顔で。

…いえ、いつもそんな顔でしたね」

「フン、食えない奴だ」

そう言ってアッシュは去って行った。

「未来に大佐。こんなところにいたんですね」

「会議が終わったようだ」

ティア達が部屋を出てきて

未来はそれ以上

ジェイドと話すことができなかった。


ジェイドの計画は成功し

タルタロスは外殻大地に戻ることができた。

「うまく上がれたようね」

「ここが空中にあるだなんて…」

未来とナタリアが、外を見てつぶやいた。


アッシュの依頼でタルタロスは

ベルケンドの第一機関研究所へ向かった。

そこに頻繁に出入りしている

ヴァンの目的を調べるらしい。

「あたしとイオン様は

ダアトに帰して欲しいんだけど」

「私達もピオニー陛下に報告しないと…」

「こちらの用が済めば帰してやる」

不満そうなアニスと未来に

アッシュは外を見て言った。

(この傲慢さはルークに似ているかも)

未来は、こっそりとため息をついた。

「私も知りたいことがありますからね。

少しの間、アッシュに協力するつもりですよ」

「…」

ジェイドだけは賛成したが

ガイは一言も話さなかった。


タルタロスはベルケンド港に停泊した。

「確かベルケンドは

あなたのお父様の領地でしたね。

昔二人でベルケンドの…」

「街は南だ。行くぞ」

「アッシュ…」

そんなアッシュとナタリアの様子を

未来は見守るしかなかった。

「昔、約束した彼が別人なら…

ナタリアも戸惑うでしょう」

ジェイドは未来にそう言って歩き始めた。

嫌な予感を抱きながら…。


to be continued

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