第十四話「砂漠の中の遺跡」


草原を歩いてしばらくすると

地面は砂漠に変わった。

「ナタリア、大丈夫?」

しばらく歩いて、日差しに耐えていたナタリアを

未来は心配した。

「ええ、大丈夫ですわ…あなたこそ…」

「え?私は平気よ!」

「いや、未来も辛そうだ」

強がった未来だったが、ガイに心配された。

「ガイの言う通りです。

ナタリアに未来…。

私とガイを日傘にしなさい。

今なら日があたって影ができます」

そう言ってジェイドは未来の前に立った。

「ジェイド…でも…」

「女性が体力的に劣るのは当然です」

『私は軍人なのよ!』

そう思った気持ちを

ジェイドは否定したようだ。

「…ありがとう」

未来は言われた通りに

高いジェイドの背中に手を当て

歩き始めた。

ジェイドの優しさがしみた。


「ん?あれ、オアシスじぇねーか?」

しばらく経つと、ルークが指さした方向に

確かにオアシスがあった。

大きな譜石が目立っている。

「助かった…」

早くのどの渇きを潤したかったが

ルークは頭痛をおこし、うめいた。

しばらくすると痛みがおさまった様子で

アッシュの声が聞こえた

イオン様はザオ遺跡にいると言うのだ。

一行はそれを信じ

ザオ遺跡の場所をオアシス住民から聞いて

そこに向かうことにした。


「あれじゃないか?!」

砂漠を歩いていたら

砂に埋もれていたが確かに遺跡があった。

「中は暗そうですわね」

「ミュウが火を噴くですの」

ミュウは早速火をふこうとしたが

「ミュウ!

森で住んでいたあなたも疲れているのだから

やめて」

未来に抱きつかれて、ふくのをやめた。

「ミューーー」

ミュウはしゅんとした。

「風があるせいか

周囲に陸艦の痕跡が残っていませんね」

「立ち去った後か。

それともまだ居るのか…」

ジェイドとティアがあたりをうかがう。

「とにかく

イオン様の手がかりがあるかもなんだから

行きましょうっ!」

「アニス、走ったら危ないわ!」

走り出したアニスに未来は注意した。

暗くて古い遺跡だ

なにが起こるかわからない。


遺跡の最深にイオン様と

六神将のアッシュ、シンク、ラルゴがいた。

「導師イオンは儀式の真っ最中だ。

おとなしくしていてもらおう」

「なんです。おまえたちは!」

ナタリアがラルゴに向けて弓矢を構えた。

「シンク!ラルゴ!イオン様を返してっ!」

「そうはいかない。

奴にはまだ働いてもらう」

ステンドグラスのような壁の前に立っているイオン様を見て

シンクが平然と言う。

「なら力ずくでも…」

ルークが剣を抜いた。

「こいつは面白い。

タルタロスでのへっぴり腰からどう成長したか

見せてもらおうか」

そう言ってラルゴは、ルークに一歩近づき

大きな鎌を目の前に構えた。

シンクもこぶしを握る。

「六神将烈風のシンク…本気で行くよ」

「同じく黒獅子ラルゴ。

いざ、尋常に勝負!」

そう名乗り、二人は駆け出した。

ラルゴはまずは

一番近くにいた未来に鎌をおろした。

「させないわ!」

未来は短剣で、ラルゴの鎌を受け止める。

「ジェイドに封印術をかけた罪

償ってもらうから!」

未来はそう言いながら、詠唱を始めた。

「こんなところで

時間つぶすわけにはいかないんだよ!

うけろ雷撃!襲爪雷斬!」

「天衝墜牙槍!」

ルークとジェイドも参戦する。

「終わりの安らぎを与えよ!

フレイムバースト!」

「ぐううううう!!」

そして未来の譜術が発動し

ラルゴは苦しそうに膝をついた。

もはや戦闘ができない状態なのは

明らかだった。

同時にガイ達が、シンクを倒すところだった。

「くっ…」

「ぬぅ…っ!」

「二人がかりで何やってんだ!屑!」

苦しんでいる二人にしびれをきらし

アッシュはルークに斬りかかった。

「今の…今のはヴァン師匠の技だ!

どうしてそれをおまえが使えるんだ!」

「同じ流派だからよ、ボケがっ!俺は…」

再びルークとアッシュは

鏡のように同じ動きだった。

「アッシュ!やめろ!」

何かを言いかけたアッシュを、シンクが止めた。

「ほっとくとアンタはやりすぎる」

シンクはアッシュが剣を腰に戻したのを確認してから

未来の方へ近づいてきた。

未来は仮面越しに

シンクと目が合った気がした。

「取引だ。こちらは導師を引き渡す。

その代わりここでの戦いは打ち切りたい」

「このままおまえらをぶっ潰せば

そんな取引、成り立たないな」

「そうよ!もう一度覚悟なさい!」

ガイと未来は、まだ武器を納めなかった。

「ここが砂漠の下だったこと

忘れないでよね。

アンタたちを生き埋めにすることも

できるんだよ」

シンクは本気だった。

「ルーク。取り引きに応じましょう」

「そうね。

今は早くイオン様を奪還して

アクゼリュスへ急いだ方がいいわ」

「陸路を進んでいる分、遅れていますからね」

ティア、未来、ジェイドが

ルークに口々に言った。

「…わかった」

ルークは複雑な顔で剣を収め

イオン様が解放された。

「イオン様…お怪我はありませんか?」

「大丈夫です、未来。ありがとう」

そう言ったイオン様だったが、顔色は良くなく

全員ゆっくりと歩いて遺跡を出た。


「ふーやっぱり外がいい!」

アニスが深呼吸をした。

「皆さん。ご迷惑をおかけしました。

僕が油断したばかりに…」

苦しそうな顔をして、イオン様が謝った。

救出されたイオン様の話では

六神将にセフィロトを護る封印を開けるように

言われたらしい。

「封印を開いたところで

何もできないはずなのですが…」

「六神将…一体どういうつもりかしら」

未来には…全員が

六神将の意図がわからなかった。

「んー、なんでもいいけどよ。

とっとと街へいこうぜ。

干からびちまうよ」

「そうね、ケセドニアへ向かいましょう」

ルークとティアの言葉に、未来も頷いた。


to be contined

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