最終話「笑顔」


ダアトの教会の礼拝堂前の大きな扉の前。

ここに新たな夫婦が三組誕生しようとしていた。

ナタリアとアッシュ

ティアとルーク

そしてジェイドと未来

ルークとアッシュが無事に戻ってきて

六人は合同結婚式を行うことにしたのだ。

世界的に有名な人達

特にナタリアとアッシュは

次期国王なので

出席したがる人は街一つほどいたが

身内だけのささやかな式にすることにした。

「ティア…わしなんかですまないな」

「そんなことないわ、お祖父様」

「綺麗だ、未来。

シトリンにも見せたかった」

「きっと見ているわ、天国で」

「あら?お父様。

もう瞳が潤んでおりますわ」

「ば、馬鹿を言うな」

バージンロードを歩く

一番身近な人とそんなことを話していると

礼拝堂の扉が開く時間となった。

六人が通れるように広めに作られた

バージンロードを未来達は歩く。

未来の視線の先には

銀色のタキシードに髪を結いあげ

教会のステンドグラスに照らされた

ジェイドがいた。

その美しさにクラクラするくらいだと

未来はひそかに思った。

「ではローレライとユリアの名のもとに

六人の結婚式を執り行います」

礼拝堂に響いたのは導師イオンの声だ。

「新郎アッシュ、ルーク、ジェイド

あなた方は

新婦ナタリア、ティア、未来が

病めるときも、健やかなるときも

愛を持って、生涯

支えあう事を誓いますか?」

「「「はい、誓います」」」

三人の声が綺麗にそろった。

「新婦ナタリア、ティア、未来。

あなた方は

新郎アッシュ、ルーク、ジェイドが

病めるときも、健やかなるときも

愛を持って、生涯

支えあう事を誓いますか?」

「「「はい、誓います」」」

心をこめて未来達は誓う。

誓いの言葉が終わると

ミュウが六個の指輪を持ってきてくれた。

「手が震えてますよ」

ジェイドが未来にしか聞こえないように

そうささやいた。

「う、うるさい」

そう言いながらも未来は幸せだった。

「では、誓いのキスを」

無事に指輪の交換が終わると

イオン様が先を促す。

ジェイドは愛しさをこめて

未来のベールをあげた。

みんなの祝福の中のキスは

未来にとって

人生で一番幸せなキスだった。


「おめでとう!」

教会前の階段で

六人の上に何枚も花びらが舞った。

「今度はあなたの番ですよ、陛下」

「言うな、アスラン。

ったくジェイドに先を越されるとはな」

「お兄さん、未来さん。

お幸せに!」

「おめでとうございます!

この薔薇のディスト

あなた方の友人として

祝福しますよ!」

「ガイ〜。

仲間はずれな私達も結婚しようよ」

「なんでそうなるんだよ」

全員が最高の笑顔だった。


翌朝。

ダアトの大きなホテルで

未来は目覚めた。

「おはようございます」

すぐに目に入ったのは

ジェイドの紅い瞳だった。

「ジェイド…おはよう」

いつもの朝のように二人は抱き合った。

直接触れ合う肌に

未来はドキドキした。

何度もジェイドと朝を迎えたのに

場所が違うせいか

未来の鼓動が速くなる。

「初々しいですね」

その反応にジェイドが笑った。

「慣れないわ。

きっとあなたに、一生恋をしてると思う」

「私もです」

未来の頬に手を触れながら

ジェイドは短いキスをした。

「何度だって貴女に恋をします」

抱きしめたままジェイドはささやく。

「ジェイド…」

「もう少し休みなさい。

昨夜は無理をさせてしまいましたから」

「…うん」

恥ずかしそうに未来は

ジェイドの腕の中で目を閉じた。


五年後。

「ママ〜パパ〜早く早く!」

「クリス!

そんなに慌てると転ぶわよ」

「危なっかしいですね〜」

グランコクマに仲がいい親子がいた。

ジェイドと未来と

二人の愛娘のクリスだった。

「あ!」

未来の注意した通り

クリスは転んでしまう。

「ほら!見せてみなさい」

クリスの膝に血が滲み

未来は治癒術をかけようとしたが

「ママ、大丈夫だよ」

クリスは自分の膝に手をかざし

跡形もなく傷を治してしまった。

「これは…

クリスは第七音素の素養がありましたか」

ジェイドは驚き

「そうみたいね。

私達みたいに

戦うはめにならなきゃいいのだけど…」

未来はため息をついた。

「大丈夫ですよ」

しかしジェイドは未来を安心させるように

未来の手を握った。

「ジェイド?」

「今はマルクトもキムラスカも平和です。

もちろんこの平和が

ずっと続くとは限りません。

ですがもし戦争になっても

貴女達には私がいます」

ジェイドの顔には愛しさがにじんでいた。

「ジェイド…」

「ママ!パパ!

早くピオニーのところ、行こう?」

未来とジェイドが見つめあっていると

クリスはまた走り出してしまった。

「クリス、また転びますよ」

「それに…陛下と呼びなさいと

いつも言ってるのに…」

「いいじゃないですか。

本人もクリスがなついて

嬉しいようですし」

真面目な未来の肩をジェイドは抱き

「ジェイド?」

そのままジェイドはキスをした。

「愛してます、私の奥さん。

いつまでも

私のそばで笑ってください」

その言葉につられて笑った未来の顔は

本当に天使のようだと

ジェイドは思った。






HAPPY END

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