第七十八話「最終決戦」


遂にたどり着いたエルドラントの最深部に

ヴァンは正座をしていた。

「たいしたものだな」

ヴァンはもう一度ルークと手を結ぼうとしたが

ルークは断った。

その成長に笑うヴァンに

全員が声をかけていく。

「あなたのような賢明な方が

不思議なものですね」

ジェイドは余裕を見せるように

メガネを外してくるくるとまわした。

その美しい素顔を見て

未来は一瞬見惚れてしまう。

昨夜のことを思い出し

未来の頬は熱を帯びた。

(いけない!ヴァンの目の前だったわ)

しかしすぐに我に返った未来は

キッとヴァンを見た。

「ヴァン!

フォミクリーをジェイドの手に返しなさい!」

未来の言葉にヴァンは

不思議そうな顔を見せた。

「あなたが生み出したルークは

命がけで障気を消し

ユリアの預言を覆したわ!

どうして私達の道ではいけないの?」

「確かに障気はルークによって消えた。

しかし堕天使…

あなたの考えに私はうなずけない。

ルーク一人では星の記憶は変わらないのだ。

世界中をレプリカにしなければ

この星は救えないことを

私は知っている」

結局未来達はヴァンを説得できず

「剣を抜け。

まとめて相手をしてやろう」

「ヴァン…覚悟!」

ヴァンが…全員が武器を構えた。

「…」

ヴァンは何かをつぶやいていたが

「ジャッジメント!!」

次の瞬間、光の柱が何体も出現した。

ヴァンが譜歌を歌ったのだ。

「きゃあ!」

その光は未来を直撃してしまう。

「うぅ!!」

未来はそこに跪くことしかできない。

「未来さーん!これを!」

「ミュウ?!」

そこにミュウが走ってきた。

腕にライフボトルを抱えている。

「私の女に傷をつけるのは許せませんね」

ジェイドはヴァンと未来の間に立った。

(ジェイド…)

未来はジェイドの大きな背中を見た。

何度この背中に助けられただろう。

「…これも因縁か。バルフォア博士。

こうしてあなたと戦うとは」

「因縁とか奇跡だとか信念だとか…

そういうものには興味がないんですよ。

ただ私は、私の引き起こしたことに

始末をつけたいだけです。

それに…」

ジェイドは顔だけをふりむいて

一瞬だけ未来を見た。

「私はあなたを倒して

最愛の人に伝えたい言葉があります」

ジェイドの足元にとてつもなく大きな

譜陣が広がった。

ジェイドの髪と軍服がはためく。

「天光満つる所我はあり

黄泉の門開く所に汝あり

出でよ神の雷!

これで終わりです!

インディグネイション!!」

「ぐおおお!」

ジェイドのもう一つの秘奥義に

ヴァンが倒れそうになる。

ヴァンなんとか剣で態勢を整えようとしたが

その隙をルークは見逃さなかった。

「これで決めてやる!響け!集え!

全てを滅する刃と化せ!

ロスト・フォン・ドライブ!」

ルークの攻撃が止んだ時

ヴァンはもう息をしていなかった。

「…」

しばらく誰も言葉を出せなかった。

しかしエルドラントは突然揺れ始めた。

そしてルークはここで

ローレライを解き放つと言う。

そんなルークにジェイドは手を差し伸べた。

最初は右手を出したが

ルークが左利きと思い出し

今度は左手を伸ばす。

「ルーク。あなたは本当に変わりましたね」

「俺、ひどかったもんな」

二人は握手をした。

「…ですが、どれだけ変わろうと悔いようと

あなたのしてきたことの全てが

許されはしない。

だからこそ生きて帰ってきてください。

いえ…そう望みます」

(ジェイド…)

ジェイドの言葉に未来は胸が熱くなった。

(ルークはジェイドの一番の友人かもしれない)

そう思いながら未来も

左手を差し伸べてルークと握手をした。

「未来…」

「ルーク。私はあなたが好きよ」

「ジェイドが妬くぜ」

握手をしていた手を離し

ルークが笑う。

「そんな意味じゃないわ」

未来もフフフと笑った。

「無事に帰ってきたら

またみんなで笑いましょう。

私の願いはそれだけよ」

「ああ…ありがとう」

ルークが見せた笑顔は

それまで未来が見てきた中で

最高の笑顔だった。

アニス、ガイ、ナタリアも

ルークと約束をし

「必ず帰ってきて」

ティアが叫んだ。

ルークはティアにも誓い

そんなルークにティアは背を向ける。

「…ルーク…」

「ティア?」

「な、なんでもないわ」

不思議そうな未来に

ティアは笑った。


未来達がエルドラントを脱出すると

ローレライと思われる光が

空へと昇っていった。

「え?」

未来は目の前にハンカチがあるのを

不思議そうに見た。

「涙が…」

隣には心配そうなジェイドの顔があった。

「ありがとう」

未来はハンカチを受け取り

しばらく泣いた。

ジェイドはそんな未来の背を撫でる。

愛しい気持ちが

二人の中であふれていった。



to be continued

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