第十三話「同じ顔」


廃工場から出ると、雨が降っていた。

そこには陸艦が止まっていて

神託の盾兵達が

イオン様をどこかに連れ出すところだった。

「イオンを、返せー!!」

そう叫んだルークの剣を

鮮血のアッシュが受け止めた。

しかし…

「同じ顔?!」

未来は思わず叫んだ。

そう、雨で髪が濡れたアッシュは

ルークと全く同じ顔だった。

それだけではなく、剣を交えて離れる時まで

鏡のように一緒だった。

「ルーク!!」

全員がそんな二人にかけつけるが

ジェイドは黙ってそんな光景を眺めていた。

「アッシュ!今はイオンが優先だ!」

「わかってる!」

シンクに言われて、アッシュは頷いたが

何故かナタリアを見つめた。

「いいご身分だな!

ちゃらちゃら女を引き連れやがって」

そう吐いてアッシュは陸艦に乗った。

「…あいつ…俺と同じ顔…」

「どういうこと?」

「さあ…」

ルーク達は動揺していたが

ジェイドはいつもの調子だった。

「ジェイド?」

未来は気になって声をかけたが

「なんでもありません。

ところでイオン様が連れて行かれましたが」

「あああ!!しまったーっ!」

アニスは急に慌て始めたが

(また、あの顔だわ…)

未来はジェイドから目を離せられなかった。

何度か見た…しかし未来は見たくない顔を

ジェイドはしていた。

「どちらにしても六神将に会った時点で

おとり作戦は失敗ですね」

ジェイドが未来の視線を遮るように

メガネをかけなおして言った。

バチカルに戻るか、陸路を行くか、意見は割れて

「責任者はあなたなのでしょう?」

ジェイドはルークに決定させ

陸路で行くことになった。

「イオン様…。

どこに連れていかれちゃったんでしょう」

「陸艦が立ち去った方角を見ると

ここから東ですから…

ちょうどオアシスのある方ですね」

ジェイドは陸艦が去ったほうを見た。

「私達もオアシスへ寄る予定だったから

ちょうどいいわ」

不安を断ち切るように未来は頷いた。

「ルーク様ぁ追いかけてくれますよね!」

「ああ」

アニスはいつもの調子だったが

ルークはまだ中返事だった。

「ルーク…大丈夫?」

「大丈夫なわけねーだろ!

あいつ…気持ち悪い…」

未来が心配すると

ルークは振り払うように首を振った。

雨のしずくがポタポタとルークから落ちた。

「そろそろ行きますよ?

雨の中では体調を消耗します」

ジェイドが先に歩こうとしたが

「ああ。親善大使殿はルークでしたね。

先頭をどうぞ」

とルークに先を譲った。

そのジェイドの顔は、先ほどの表情ではなく

未来は一安心したが

(いつかジェイドは話してくれるかな?

それとも…)

と思うと胸が痛んだ。

何故だかはわからないが

ジェイドが苦しんでいるならば

一緒に苦しみたいと未来は思うのだった。


to be continued

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