第七十七話「空っぽ」


エルドラントの奥へ奥へと進んでいく。

ルークは罠の落とし穴に落ちてしまったが

無事に合流することができた。

どうやらルークはアッシュに勝ち

ローレライの鍵を託されたようだ。


ガイによるとホドのレプリカらしい街並みを

歩いているとルークが立ち止まる。

「ルーク?どうしたの?」

未来が振り向いて見ると

ルークの体は音素で包まれていた。

「アッシュが…死んだ」

「嘘…!」

そのままナタリアは

その場にしゃがみ込んでしまう。

そこに突然、大きな譜陣が広がった。

「いけません!罠です!」

ジェイドが逃げようとしたが

「でもナタリアが…!」

未来の焦りの通り

ナタリアはとても

動ける状態ではなかった。

しかしルークから強烈な光が発生し

次の瞬間、罠は消えていた。

「超振動…いや、第二超振動?

ばかな…!」

「全ての音素の効力を無効化するという

あの?!」

ジェイドも未来も信じられない。

「第二超振か、冗談じゃないね」

そこに現れたのはシンクだった。

「さっきの罠はあなただったのね。

イオン様と同じ存在のあなたとは

本当は戦いたくないけれど」

未来は攻撃の構えをとる。

「同じじゃない。

七番目のイオンは甘ちゃんさ。

あいつは犬死にするところだった」

「ですが助かりましたわ。

未来のおかげで…」

「そうだよ。今の言葉、取り消して!」

ナタリアとアニスはそう非難した。

「だけどいずれ死ぬよ。

『導師イオンは死ぬ』

これが預言だからだ。

馬鹿馬鹿しい。

そんなものがなければ僕は

生まれずに済んだのに」

心底シンクは預言をうらんでいた。

「生まれてきて

何も得るものがなかったっていうの?」

「ないよ。僕は空っぽさ。

試してみようよ。

アンタ達と空っぽの僕

世界がどちらを生かそうとしているのかさ!」

シンクの叫びがエルドラントに響き

戦闘が始まった。

「大地の咆哮よ!グランドダッシャー!」

「くっ!」

シンクは未来に譜術で攻撃するが

未来は軽やかに飛び

それから逃げる。

「なんて短い詠唱なの」

「アンタほどではないよ、堕天使。

たとえアンタがイオンを助けても

星の記憶がある限り

無駄なことさ」

「シンクの馬鹿ー!!」

シンクが未来に皮肉を言うと

アニスがトクナガを

シンクにぶつけてきた。

ルークとガイは剣を構え

ジェイドとティアは詠唱をする。

しかしナタリアは

その場を動くことができなかった。

「ナタリア、大丈夫?」

シンクが光と共に消滅したのを確認し

未来はナタリアの心配をする。

「アッシュは本当に

死んでしまったのですね」

ひとすじの涙が

ナタリアの頬を伝った。

「ナタリア、行きますよ」

「ジェイド!」

「もう少しだけいいだろ」

容赦のないジェイドに

ルークとガイが驚く。

「今ここで朽ちるのが

アッシュの願いですか?

あなたがアッシュに好意を抱くのは

自由です。

ですが、やるべきことを

忘れてはいけません」

ジェイドの言葉は真実だった。

「ジェイドに未来。

第二超振動って言ってたな」

ガイは慌てて話を変える。

「わかりません。

第二超振動はまだ理論が確立していない」

「超振動同士が干渉しあうことで

全ての音素を無効化すると

私も聞いたことがあるけど…

まさか本当に実現できるなんて…」

信じられない気持ちで

未来はルークを見た。

「もしも第二超振動なら

これをくれたのはアッシュだ」

手を見つめてルークは全員を見渡す。

「だから俺は

アッシュに恥ずかしくない戦いをする。

みんな、力を貸してくれ」

ルークの言葉に未来達はうなずいた。




to be continued

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