第七十五話「大切な話」


アブソーブゲートとラジエイトゲートで

プラネットストームを停止する作業は

無事に終わった。

ラジエイトゲートではモースと戦い

モースの体は最後は解けて消えた。

モースが連れていたイオン様のレプリカ

フローリアンとアニスが名付けた少年は

ダアトで体力を回復しているイオン様と

共に暮らすことになる。

モースが亡くなったことで

預言を詠まされる危機がなくなったイオン様は

フローリアンと一緒に無事を祈ると言った。

そして、あとは

エルドラントへ進出するだけになる。


「作戦決行は明日。

キムラスカ・マルクト連合軍と

合流したあとになります。

出兵前の兵士には24時間の自由行動が

与えられますから

その間は時間があります」

ケセドニアでジェイドが説明をすると

「じゃあ、私達も自由行動しようよー!」

アニスが嬉しそうに笑う。

「構いませんが、ケセドニア付近から

あまり離れないでくださいよ」

ジェイドもつられて笑った。

「は〜い。わかってまーす。

ガイ、ナタリア行こう!」

アニスが二人の手を引こうとしたら

当然ガイは震えた。

「わ、私は…」

「未来はこちらへ」

未来がついていこうか迷っていると

ジェイドに優しく手を握られた。

未来の顔を赤く染めたのは

夕日だけではないようだ。


「フローリアンが詠んだ預言通りなら

このオールドラントは

障気によって破壊される筈だったのね」

酒場のカウンターで未来は

カクテルのグラスを見つめながら

つぶやいた。

フローリアンが詠んだ第七譜石には

やはり世界の滅亡が書かれていた。

「ええ。ですが障気はルークが消した」

ウイスキーを飲んだジェイドがうなずく。

「やっぱりルークは

ユリアが詠んだ滅亡をくつがえしたのね」

「だとしたら偉業です」

「あら?ジェイドもよ」

くすりと未来が笑った。

「私も?」

「ええ。

だってフォミクリーを作ったのは

ジェイドだもの。

あなたが世界を救ったと言っても

過言ではないわ」

「ほめすぎですよ」

二人が見つめあうと

お店の扉が開く音がした。

開いたのはアニスだ。

「おっじゃましまーす。

二人とも、飲んでるの?」

元気なアニスの声が酒場に響く。

「そうよ」

「もう少し

気の利いた場所で飲みたかったのですが

この街では…ね。

アニスは自由時間を満喫するのでは

なかったんですか」

「私はティアに気を利かせてあげたんです」

アニスがジェイドの隣に座った。

「へぇ…酷なような気もしますが」

「ジェイド!ダメよ」

未来が慌てる。

「…大佐に未来。なにか隠してるでしょ」

「いえ。何も」

ジェイドはすました顔だ。

「…まあいいや。

大佐や未来はヴァン総長を倒したら

どうするの?」

「私達は軍人だから

また軍属の生活に戻るだけよ」

そう言って未来はカクテルを

一口飲んだ。

「前みたいに大佐と会わずに

一か月経っちゃった〜

なんてことにならないようにね」

アニスは意地悪そうに言った。

「そこまで私も辛抱強くないですよ。

ただ、忙しくはなりますね」

「どうしてですか?」

アニスがジェイドの顔をのぞくと

真剣な顔が見えた。

「おかしいですね。

私は帰ったら改めてフォミクリーの研究を

再開したいと思ってるんです。

レプリカと言う存在を代替品ではない何かに

昇華するために」

「素晴らしいわ!」

恋人の決意に未来は喜ぶ。

「うん!是非それやってください。

イオン様と研究を見学しに行こうかな」

「楽しみにしています。

さて、アニス。

そろそろ宿に戻ってください」

ジェイドがウイスキーを飲み干した。

「えー、大佐達はまだここで飲むんでしょう」

「ここからは大人の時間です。

お子様は早く帰りなさい。

ねえ、未来」

ジェイドは未来の肩を

アニスに見せしめるように抱いた。

「じぇ、ジェイド!」

「あは、しょーがないなー」

アニスは苦笑して店を出たが

ジェイドが抱いた肩から

腕を離す気配はない。

「ジェイド…あの…」

「未来」

至近距離で甘く名前を呼ばれ

未来の鼓動は爆発しそうだった。

けれど未来はジェイドの赤い瞳から

目をそらせない。

「ヴァンに勝って…

今度こそ決着がついたら

大切なお話があります」

「大切な話?」

未来がオウム返しに聞くと

ジェイドはうなずいた。

「どんな話?」

「それはお楽しみです」

ジェイドは笑い

桃色の未来の唇に、そっと自分を重ねた。

そして口づけしながら慈しむように

未来の背中を撫でる。

お酒によりいつもより熱いキスに

未来はくらくらした。





to be continued
(次の話は番外編で裏夢になります。
パスワードはUNDERと同じです。
読まなくてもストーリーに影響はありません)

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