第七十二話「消えていく障気」


決意したルークと共に

もう一度レムの塔に向かう。

道中、アルビオールでも昇降機の中でも

誰も言葉を発しなかった。


最上階ではマリィ姉さんやシトリン達の

沢山のレプリカが待っていた。

まだここにたどり着いていない仲間のために

命を差し出すつもりだ。

「俺がやると言っただろう!

何故ここに来た!?」

そこにアッシュが現れる。

ルークは隙をついてアッシュから

ローレライの鍵である剣を奪い

その鍵を高く掲げた。

「離せ!」

「私はルークの意見に賛成です。

…残すならレプリカより被験者だ」

もう一度鍵を取り戻そうとしたアッシュを

ジェイドは羽交い締めにして止める。

「ルーク!やめて!」

そしてティアもルークのもとへと走ろうとしたが

それを止めたのは

女性に触れない筈のガイだった。

「…ガイ。…ありがとう…」

「…馬鹿野郎が」

ガイは震えながらそう吐いた。

だけど同じように未来も

ルークに駆けつけようとする。

「ダメだよ!未来!」

しかしアニスがトクナガを大きくし

未来を阻んだ。

「アニス!どいて!」

「ダメだってば!

大佐のかわりに止めてみせる!」

そうやり取りしている間に

ルークは始めてしまった。

「だ、ダメか…」

しかしすぐにルークはひざをつく。

「おかしい…集まりかけていた第七音素が

拡散していきます。

このままでは障気は消えない」

ジェイドは不審に思ったが

「…宝珠か!」

アッシュはルークと共に剣を握った。

そして超振動が強くなり

障気が消えていき、青い空が見え始める。

「未来!私達の障気も!」

「…消えていく」

未来は信じられないと

自分の両手を見つめた。

ティアと未来の体内に蓄積された障気も

浄化されたように消えていったのだ。

そしてレプリカは姿を消していた。

マリィとシトリンのレプリカを除いて。

「約束だ。

生き残ったレプリカに生きる場所を与えてくれ」

「たのむ…我々の命と引き換えに」

マリィとシトリンも消えようとし

「シトリン…!」

未来は目を閉じた。

レプリカとは言え、弟が消えていくのを

見たくなかった。

「俺、生きてるのか?どうして…」

ルークは手を見つめ

ティアが…全員が安堵する。

しかしルークがティアに手を隠すと

その手にはローレライの宝珠が握られていた。

アッシュが言うには

ルークが宝珠を構成する音素を

自分の中に取り込んでいたらしい。

それを説明するとアッシュは

レムの塔をあとにした。

「…ルーク」

ジェイドは名を呼んでから

ルークに背を向け、メガネをかけ直す。

「生き残ったとはいえ

本来なら消滅しかねないほどの力を使った。

非常に心配です。

ベルケンドで検査を受けてください」

「ジェイド。

そういうのは

ルークの顔を見て言うべきじゃない?」

未来はジェイドに注意をし

「旦那は意外とシャイなんだよな」

「というかツンデレだよね」

ガイとアニスがからかう。

「おや、みなさん。言ってくれますね〜」

ジェイドのいつもの調子に

みんな…とりわけルークが心から笑った。


ジェイドに言われた通りに

ルークはベルケンドで精密検査を受け

その結果を未来達は宿屋で待った。

そこにルークが来て

「ちょっと血中音素が減ってるけど

平気だってさ」

みんなを安心させるように笑う。

しかし宿屋に

ルークとジェイドと未来とミュウが

残されると

「悪い子ですねぇ。また嘘をついて」

ジェイドはルークにそう言った。

「え?!」

未来は信じられないとルークの顔を見たが

ルークは否定をしない。

「…あなたの嘘に私も載せられておきます。

でも無理は禁物ですよ」

「…ジェイドに隠し事はできないな」

「あなたが下手なんですよ」

ジェイドの微笑みは苦かった。

「…見抜けなかった」

「貴女は鈍感ですからね」

未来がぽつりとつぶやくのを見てから

ジェイドはもう一度、ルークを見る。

「それと一つ忠告しておきます。

今のあなたは音素の乖離が早まっている筈です。

これ以上、むやみに力を使わないでください。

それに未来もです。

アニスが止めなかったらどうなっていたか…」

「…うん。ありがとう。ジェイド」

「ごめんなさい」

ジェイドにルークは感謝し、未来は謝った。




to be continued

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