第七十一話「もっと残酷な答え」


居場所がないと知ったレプリカに

アッシュは取り引きをしとうとした。

障気のために命を差し出せば

まだ塔にたどり着いていないレプリカに

住む場所をあたえる、と。

死ぬつもりなアッシュを追いかけ

未来達はダアトへ向かった。


「アッシュ…あなたは…」

アルビオールの中でナタリアは

泣きそうな顔になる。

「大丈夫よ、ナタリア」

「そうだよ。なにか他に方法がある筈だもん」

ティアとアニスはなぐさめたが

「もしも…なにも手立てがなければ…」

未来は考え込んでしまった。

「未来、怒りますよ?」

「えー?!なんでですか?」

ジェイドの突然の言葉にアニスが驚く。

「さーなんででしょうね」

しかしジェイドは笑ってごまかした。


ダアトの教会にアッシュはいなかった。

礼拝堂にいたテオドーロ市長が

アッシュはローレライの宝珠を探すために

セフィロトへ行ったこと

インゴベルト陛下がアッシュから手紙を受け取り

障気を中和するからレプリカに協力し

かわりに彼らの保護を頼まれたことを説明した。

「あいつ…自分が死ぬことは書いてないんだな」

ルークがつぶやき

「ガイ、説明をお願いします」

いつものようにジェイドがガイに説明をさせた。


アニスとナタリアは

アッシュを止めたいと言うが

ジェイドはうつむく。

「…ジェイド。お前は何も言わないのか?」

ピオニー陛下の顔には

『珍しい』

と書いてあるようだった。

そして

「私は…もっと残酷な答えしか言えませんから」

苦しそうにジェイドがつぶやく。

「…大佐。まさか!」

「まさか…ルークに?!」

「ふざけるな!」

ティアと未来は信じられないと言う顔で

ジェイドを見つめ

ガイはジェイドの胸ぐらをつかんだ。

「ダメですわ!そのようなころは認めません!

私はルークにもアッシュにも

生きていてもらいたいのです」

ナタリアの言葉は

ジェイド以外の気持ちを代弁してた

「私だってそうです。

ただ、障気をどうするか考えた時。

もはや手の施しようがないことは事実ですから」

「ジェイド…!あんまりだわ!」

「…」

未来の非難にジェイドは黙る。

「そうですわ!未来!

シェリダンのように

あなたは助けられませんの?!」

「ナタリア…!」

「落ち着いて」

取り乱しそうなナタリアに

ティアとアニスが驚いた。

「無理です!第七音素は癒しの力しかない。

貴女が一番ご存じのはずだ」

ジェイドはナタリアに首を横に振ってみせた。

「…少し、考えさせてくれ」

そう言ったルークは震えていた。


未来は二階からルークを見た。

「だったら!障気なんてほっとけ!」

ガイの叫びが教会に響く。

「…未来」

そこにジェイドが声をかけてきた。

「ジェイド…私は…」

「言ったでしょう?怒りますよと。

力を使うつもりですね」

「ナタリアに言われちゃったしね」

未来は無理をして笑ったが

「…」

それを聞いたジェイドは黙って未来に近づき

「んんっ!」

強引に口づけをした。

未来はジェイドの腕の中でもがいたが

どんどん深くなるキスに

やがて何もできず

ジェイドの情熱に溺れていった。

「おわっ!」

そして長い長い口づけを続けていると

ルークがやって来てしまった。

「る、ルーク…」

未来は慌ててジェイドから離れ

ジェイドは残念そうにため息をついた。

「ルーク、邪魔をしましたね」

「ごめん。

でもこんなところでしているとは

思わなかったよ」

「…」

「ジェイド?」

急に黙り込んでしまうジェイドに

未来は不思議そうに名を呼んだ。

「ルーク」

「ん?なんだ改まって」

「恨んでくれて結構です。

あなたがレプリカと心中しても

能力の安定した被験者が残る。

障気は消え

食い扶持を荒らすレプリカも数が減る。

いいことずくめだ」

「…ジェイド…あんたは俺に…」

「死んでください、と言います。

私が権力者なら。

友人としては…止めたいと思いますがね」

その言葉はジェイドにとって

最大の優しさが詰まっていた。

「…ジェイドが俺のこと

友達だと思ってくれてたとは

思わなかった」

ルークもそんなジェイドの言葉に

嬉しそうに笑う。

「そうですか?

…そうですね。私は冷たいから」

ジェイドはルークに背を向けた。

「すみません」

「ジェイド…そんな辛い顔をしないで」

それまで傍観していた未来が

ジェイドにお願いをした。

「未来…」

「ルークも、よ。

そして…ごめんなさい。私は…無力だわ」

未来は胸が張り裂けそうだった。


「ルーク!!」

アッシュに自分がやると言い出したルークに

ガイは突然、ルークを殴った。

「…死ねば、殴られる感触も味わえない。

いい加減に馬鹿なことを考えるのはやめろ」

「ガイ…みんな…ごめん」

それでもルークの決意は変わらなかった。




to be continued

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