第七十話「さようなら、サフィール」


預言会議に参加するために

バチカルを出ようとした。

しかし街の出口にいたのはスピノザだった。

アッシュが障気を中和するために

犠牲になるつもりだと言うではないか。

慌ててレムの塔に行くことにした。

もし本当に実行するのならば

レプリカを道連れにするはずだ。


レムの塔は沢山のレプリカ達が

昇降機に乗ろうとしていた。

全員が生気のない顔をしている。

未来達も一緒に昇降機に乗ろうとしたが

昇降機は出発してしまった。

「まずいですね。他に上に行く方法は…」

「とても昇降機を待っている余裕はないわね」

ジェイドと未来は困り、眉間にしわを寄せる。

しかしルークが階段を見つけ

無謀かもしれないが、歩いて上ることになった。

「年寄りにはキツイですねぇ」

ジェイドはやれやれと両手を広げる。

「軍人だろ、あんた…」

ルークは呆れ

「そうね。訓練に比べたら、楽勝よ」

未来は励ました。

「まあ、マルクト軍の訓練は

そんなに厳しいですの?」

軍とは縁がないナタリアは驚く。

「どこの軍もそうだよ」

「ええ。そうよ」

アニスとティアの顔には

当然と書いてあった。

「死なないために、ね」

最後にガイがつけたし

階段をのぼることになった。


「はあはあ」

しばらく階段をのぼると

ナタリアがしゃがみこんでしまった。

肩で息をしている。

「ナタリア、大丈夫?」

「休憩しましょうか?」

未来が駆け寄り、ジェイドが提案した。

しかし

「いいえ、大丈夫ですわ。

こうしている間にも、アッシュは…」

ナタリアは再び歩き出し

作業用のリフトを見つけた。

「どこまでのぼれるのでしょうね。

そろそろ楽をしたいものです」

「大佐が一番疲れてないように見えますけど」

ティアがそう笑う。

「いえ、生まれつき体が弱いので…げほごほ」

ジェイドの演技はわざとらしかったが

「え?そうなの?」

天然の未来は本気にしてしまう。

「未来〜そろそろ大佐の冗談を見抜けないと

振り回されちゃうよ?」

アニスがそんな未来に忠告をした。


強引な手段だが、昇降機を覆うガラスを破壊し

ちょうどのぼってきた昇降機に飛び移った。

そこで待っていたのは…

「あ、姉上?!」

「シトリン…ではなく9-005だったわね」

ガイと未来を惑わすレプリカだった。

レプリカ達はモースが迎えてくれる

と信じていたが

「たとえ何万年待とうと

そんなことはあり得ませんよ!」

またしてもカイザーディスト号を引き連れた

ディストが否定をする。

そしてカイザーディスト号が

レプリカ達を始末しようとした。

「ここの邪魔なレプリカを始末しないと

ネビリム先生の復活の作戦に

着手できませんからね」

「…監獄から逃げ出したかと思えば

まだそんな愚かなことを。

もう諦めなさい!」

厳しい声でジェイドは叫び

「…今まで見逃してきた

私が甘かったようですね。

さようなら、サフィール」

今度はうつむく。

「…本当に私を見捨てるんですね!

ならば…ならば私も本気で行きますよ!

レプリカと共に滅びるがいいっ!!」

ディストの決意の言葉が

戦闘開始の合図だった。

カイザーディスト号が砲弾を始める。

未来はバックステップでそれをよけ

「バリアー!!」

ナタリアの譜術が未来を守る。

「未来!あなたもあなたです!

私のジェイドをかどわかして!」

ティストは地団駄を踏んだ。

「誰があなたのものになったというのですか?

気持ち悪いことを言わないでください」

「そうね、聞き捨てならないわ」

未来は余裕の笑顔を浮かべ

譜陣を展開した。

「セイントバブル!」

今までのカイザーディスト号のように

未来は水の譜術で始末しようとするが

今回はダメージを受けたようには見えない。

「ハーハハハッ!

何度も同じ手はくいませんよ!

今回は防水加工ですから」

「それは失礼」

未来はディストをにらみつけた。

「未来!どいてください!」

ジェイドはそう叫び、詠唱を始める。

「大佐…その譜陣は…」

「ジェイド…?」

ジェイドが発生させた譜陣は

とてつもなく大きい。

「断罪の剣よ、七光の輝きを持ちて降り注げ!

プリズムソード!」

詠唱のセリフ通りに、たくさんの剣が

断罪をするように四方から降り注ぎ

カイザーディスト号を破壊していく。

「ククク…はーっはっはっはっ」

諦めたように唐突に笑いながら

ディストはなにかのボタンを押した。

それは自爆装置のようで

カイザーディスト号は警告音を鳴らす。

「ネビリム先生…今そちらに向かいます!」

ディストは空を見上げた。

その間も警告音は続く。

このままではここにいる全員が

道連れになってしまう。

「させるか!」

しかしルークが突き飛ばし

飛ばされたカイザーディスト号は上空で爆発し

ディストは一緒に散った。

「ジェイド…」

未来は心配そうに声をかける。

「馬鹿な男です。

最期まで叶わない夢を追いかけて」

ジェイドはしばらく空を見上げていた。




to be continued

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