第六十八話「決闘」


「ここにいたのか」

ピオニー陛下との謁見を終え

城から出てきたときに待っていたのは

雪崩に巻き込まれた筈のラルゴだった。

「ようやくのご登場ですのね。

会いたくはありませんでしたけれど」

「ナタリア…」

この人が父だと知らないナタリアは

不快感を露にしたが

事実を知っている未来達は

複雑な想いだった。

そんなナタリアに笑い

ラルゴはアリエッタがチーグルの森で

決闘をするつもりだと告げる。

「立会人はあんただったね」

「アリエッタが負けたら

次はあなたが相手という訳ですか」

アニスとジェイドはラルゴをにらみつけたが

「俺は立会人としての仕事しかせんよ。

それよりこんな場所で殺気を出してはいかんな。

堕天使」

「…」

ラルゴは未来を見てから去って行った。

「アニス、大丈夫か?」

アニスをルークが心配するが

「私に気を遣うなら

ルークは別の人に気を遣った方が

いいんじゃないの?

この間から、すっごい傷つけてるの

気づいてないんだ」

アニスから厳しい言葉をもらうだけだった。

「そういうところは成長してないからな」

「え?どういうこと?」

ルークと同じく気がついてない未来が

ガイに聞いた。

「ハハ、やっぱり君も気がついてなかったか」

しかしガイは笑ってごまかした。


「…」

チーグルの森の入り口で

ルークは立ち止まった。

「ルーク?」

「未来…ありがとう、本当に」

「え?どうしたの?いきなり」

ルークの突然の感謝の言葉に

未来は首をかしげる。

「未来が助けなくちゃ

きっとイオンは死んでた。

イオンと初めて言葉を交わしたここで

改めてそう思うよ。

俺のためじゃないだろうけど、ありがとな」

「そうですわね。

ですからこそ、決闘に意味はないのではなくて?

アニス」

ナタリアはもう一度アニスを止めようとしたが

アニスはうなずかない。

「ううん。

今回はアリエッタを踊らしていた

ヴァン総長とは関係なく

アイツ自身が決めたことだから

受けてやる。

みんなはここで待ってて」

「ダメよ、アニス」

歩き始めようとしたアニスを

未来は優しく止めた。

ルーク達も「アニスは仲間だ」と

彼女をなぐさめていく。

「やれやれ。

仲間…という言葉が

正しいかどうかはわかりませんが

まあ腐れ縁であることは認めますよ」

「大佐らしい言い方」

「ジェイドが一番付き合いが長いからね。

それじゃ、行きましょ!アニス」

未来はアニスの手をつないだ。

どんな言葉よりもそれは

アニスを安心させた。


「待ちかねた…です!」

ライガクイーンと戦った奥地で

アリエッタと仲間の魔物とラルゴが待っていた。

アリエッタはイオン様と同じ服を着ていた。

「アニス、覚悟!」

敵意をむき出しにしたアリエッタは

アニスに向けて詠唱を始める。

その時間を稼ぐように魔物が

アニスが巨大化させたトクナガに

襲い掛かった。

「ダメ!」

しかしそれを阻止したのは未来と

「前衛は得意ではないのに

飛び込むとは感心しませんね」

呆れるように笑ったジェイドだった。

「未来、やめて。

アリエッタ、未来とは戦いたくない。

イオン様を助けてくれたから」

「あなたはそうでも

私はタルタロスに乗っていた兵士の仇があるわ。

それにアニスの仲間として

ここに来たのだから」

そう会話している間も

未来は譜陣を展開させており

「敵を蹴散らす激しき水塊よ!

セイントバブル!」

魔物に譜術を放つ。

「!?」

「根暗ッタはこっちでしょ?!」

倒れたお友達に気をひかれたアリエッタの隙を

アニスは見逃さず

それがアリエッタの致命傷となった。

もう一体のライガも

ルーク達によって絶命していた。

「…イオン様…どこ?

痛いよぅ…イオ…」

アリエッタはそこで息絶えた。

アニスは泣いて謝ろうとし

ラルゴに止められる。

ラルゴはアリエッタの死体を抱き

去って行こうとしたが

ルークがロケットペンダントを投げ渡した。

その反応を見ると

やはりナタリアの父親なのだ

と改めて未来達は分かった。

「アニス…」

ユリアシティへ行くことになったが

アニスは立ち止まったままだった。

「アリエッタは被験者のイオン様のもとへ

いったのよ」

「うん…そうだと思う」

未来の言葉にアニスは何度もうなずいた。



to be continued

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