第六十一話「宝珠と異変」


「あらん。

坊や達もローレライの宝珠を探しているの?」

ロニール雪山の麓にいたのは

漆黒の翼の三人だった。

「アッシュはここにいるのですか?」

アッシュと行動を共にしている彼らを見て

ナタリアは飛びついた。

「あらん。

あっちもナタリアナタリアうるさいけど

こっちはアッシュアッシュとかしましいねぇ」

「ナタリアが六割

レプリカが三割

残りはヴァン。

旦那の話は、これでできてるからなぁ」

漆黒の翼の三人は呆れていて

「…なんか想像つく」

「同感です」

アニスとジェイドも苦笑いをした。

「大佐はもう少し

未来の事考えた方がいいですよ」

「え?私?」

アニスに突然名を呼ばれ

当然未来は驚く。

「おや、私は未来が十割ですよ?」

「まあ!」

ジェイドの言葉にナタリアは感激したが

「そ、そんなことより

アッシュを追いかけましょう!」

未来は慌てて歩き始め

「未来って

絵に描いたようなツンデレだよね?」

背中から聞こえたアニスの言葉は

恥ずかしくて聞こえないふりをした。


奥にあるセフィロトに

ローレライの剣を持ったアッシュがいた。

アッシュは宝珠を受け取り損ねたルークを批判し

去って行ってしまう。

「どうしてこんな風になっちまうんだろう」

「気付いてないのか」

「困ったルークね」

こぼしたルークに

ガイと未来はため息をついた。

「え?」

「…いや、いい」

「自分で気が付かないとね」

諭すように未来は言い

ジェイドの言う通りに例の預言士を探しに

バチカルへ向かうことにした。


到着したバチカルでは

幾人もの兵士が走り回っていた。

モースが逃走したというではないか。

「よし。俺達もモースを探そう」

ルークが走り、全員がそれに続いた。


「モースの野郎!」

「…捕まえる!」

「ですの!」

天空客車の中でルーク達は叫んだ。

「皆さん。頭に血を上らせたままでは…」

ジェイドが止めようとしたが

「導師イオンの仇を!」

「今度こそ、許さない!」

「…いつも冷静なティアと未来までか」

どんどん怒りが加速していく未来を見て

ガイがため息をついた。


モースは港にいて、自分の正当を訴えた。

「そうですとも、モース様!」

そこにいつものように椅子に乗った

ディストが現れた。

「ディスト。

いっそのこと、ず〜っと

氷付けにしておけば

よかったかも知れませんねぇ」

ジェイドはこんな時でも面白そうだ。

(なんだかんだ言って

仲いいとしか思えないわ)

未来はジェイドを見て

それに気が付いたジェイドはくすりと笑った。

モースは導師の力を手に入れると言い

ディストは第七音素を取り込む譜陣を

モースに施し

モースは魔物のような姿になってしまう。

「モースの奴、あんな化け物になっても

預言を守らせたいのか」

ルークがモースとディストが去った方向を見て

つぶやいた。

ティアはこのことを教団に報告した方がいい

と提案したが

「だが、現時点で

ローレライ教団の最高責任者は

誰になるんだ?」

「そうよね。

イオン様は死んだことになっているし…」

ガイと未来は困る。

しかし、ひとまず

テオドーロ市長を訪ねることになった。


「…ああやって、体内に音素を取り込む技術も

私が幼い頃開発したものです」

天空客車に乗ろうと歩き出した時

ジェイドがそう告白し

全員が驚くしかなかった。

「時間をさかのぼれるなら

私は生まれたばかりの自分を殺しますよ。

まったく

迷惑なものばかり考え出してくれる」

ジェイドはため息をついたが

「それは困る」

「ルークもイオン様も

生まれなくなっちゃいます」

ルークとアニスは否定をする。

「そうですわ。

それに未来と愛し合うことも

できなくなりますわ」

「わ、私と?!」

ナタリアに微笑まれたが

未来はロニール雪山のように

恥ずかしくて仕方がなかった。

「そうですね…。

起きてしまったことは変えられない、か」

ジェイドはメガネをかけ直し

次の瞬間には微笑んだ。

「それにナタリアの言う通り

未来とあーんなことも

今のようにできなくなりますね」

「えー?どんなことですか?」

「それは秘密です」

面白がるアニスだったが

未来は慌てて首を横に何度も振る。

「じぇ、ジェイド!

変なウソをつかないで!!」

「ま、そういうことにしておきますか」

ジェイドはもう一度微笑み

先ほどの自虐的な言葉は

もう言わなかった。


to be continued

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