第六十話「謎の預言士」


「なあ…未来は大丈夫なのか?」

ベルケンドに到着すると、ルークがそう聞いた。

「大丈夫って?」

「ティアの障気をもらっちまったんだろ?」

「ああ、もちろん大丈夫よ」

未来は笑った。

確かに体が重いが、日常生活に支障はない。

「大丈夫でなければ、怒りますよ?」

先頭を歩いていたジェイドは

そう念を押した。

「大丈夫ってば…それよりティアも体が楽に…」

未来がそう言いかけた時

一人の男が片膝を立てて震え

次の瞬間、倒れてしまった。

「しっかりして!」

「治癒術を!」

ティアと未来が慌てて治癒術をかけたが

男の意識は戻らなかった。

「そんな…未来の術が効かないなんて…」

ティアが茫然と言うと

キムラスカの兵士が来て、男を抱えた。

兵士の話では、旅の預言士が預言を詠むと

突然倒れて亡くなってしまうという。

ジェイドはフォミクリー情報を抜かれたかもしれない

と予測し

スピノザから話を聞いてから

預言士が向かったらしいバチカルへ向かうことにした。


スピノザは研究室にいて

ルークの超振動で障気を消せるかもしれないと言った。

「そんなことが可能なの?」

「俺の…超振動で…」

未来は信じられないという顔をし

ルークは自分の両手を見た。

スピノザからアッシュがロニール雪山に向かったと聞き

バチカルは後にし

ロニール雪山へ行くためにアルビオールに乗った。

「ジェイド?」

アルビオールの中でジェイドは考え込むように腕を組み

ルークもうつむいたままだった。

「ああ、未来…耳をかしていただけますか?」

他のメンバーには気づかれないように

ジェイドはそっと未来に耳打ちをした。

ルークが命がけで障気を消すかもしれない、と。

「そんなこと…」

「ええ。無理ですし、止めなければいけません」

ジェイドがうなずく。

「そうね、私も絶対に止めたいわ。

だって、ルークは…」

「アクゼリュスを消滅させ

シェリダンの皆さんを傷つけ

大勢の『敵』と分類された

名も知らぬ人々を手にかけた」

「…っ?!」

ジェイドの淡々とした言葉に

未来は過剰反応した。

「そうね…

これ以上、ルークは両手を血に染めたらいけないわ。

私達のようになってはダメよ」

「そういうことです」

「私もルークを説得してみる」

「そう言ってくださると思っていました」

やっとジェイドが笑顔になる。

「ただし力を使うのだけは許しませんよ?」

「私もそう言うだろうと思ったわ」

ジェイドと未来は笑いあったが

未来もルークも心は宙を浮いているようだった。




to be continued

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