第五十九話「惑星預言」


「やがてそれが

オールドラントの死滅を招くことになる」

ザレッホ火山の最深部に到着すると

イオン様の声が聞こえた。

それは惑星預言を詠む声だった。

「遅かった!!」

未来は慌ててガイと一緒に

イオン様を監視していたモースの前に

牽制するように

短剣を構えて立ちはだかった。

しかし次の預言で未来は動けなくなる。

「キムラスカ軍は玉座を最後の皇帝の血で汚し

高々と勝利の雄叫びをあげるだろう」

(最後の皇帝?まさか…?!)

思わず未来がモースを無視しして振り返ると

ルークがイオン様を支え

イオン様はティアの手を握っていた。

「僕が…あなたの障気を受け取ります」

「いけません!導師!」

慌てて未来は

繋がれたイオン様とティアの手に

自分の両手を添えた。

「未来?」

「なにを…」

二人は驚いたが

未来は集中するために目を閉じた。

なぜかイオン様を救う方法はわかった。

イオン様の体に

未来の中にある第七音素を流しこみ

乖離しかかった音素をもう一度つなぐ。

(死なないで!死なないで!!)

必死で念じていると、突然未来はせき込んで

イオン様から両手を離した。

ティアの汚染された第七音素が

未来の体に取り込まれてしまった。

「未来!」

「来ないで!!」

名を叫んで駆け寄ろうとしたジェイドに叫び

未来はなんとかイオン様に笑おうとした。

「三分の一です」

「え?」

不思議そうに聞いたイオン様は

顔色は悪かったが

一命はとりとめた様子だった。

「障気です。

イオン様とティアと私で三分の一…。

この量なら、命に別状はありません」

未来は今度は心から笑った。

大切な人を救えた達成感だけが

心の中にあった。


助かったイオン様だったが

下手をしたらまたモースが

惑星預言を詠ませようとするため

公には「亡くなった」と発表し

アニスの両親の部屋で暮らすことになった。


「ジェイド…」

パメラ達の部屋の近くにある廊下に

ジェイドは立っていて

未来はジェイドのたくましい背中に

しがみつくように抱きついた。

「おや?珍しいですね」

「…」

ジェイドは嬉しそうにそう言ったが

未来は何も言わずに更に強く抱きついた。

そうでないと泣いてしまいそうだった。

『玉座を最後の皇帝の血で汚し

高々と勝利の雄叫びをあげるだろう』

先ほどの預言が未来の頭から離れない。

最後の皇帝とはピオニー九世陛下だろう。

では、皇帝の懐刀と言われているジェイドも…。

「貴女も危ういのかもしれませんよ」

未来の心を見透かしたようにジェイドは言い

抱きしめられている未来の腕をほどいた。

「ジェイド?」

「貴女は堕天使…

我がマルクト軍最強の治癒術師です。

キムラスカ軍が生かしておくはずがない」

「ジェイドと一緒に死ねるなら

それもいいかも…」

言いかけた未来の唇は

荒々しく押しつけられたジェイドの唇で

動けなくなった。

逃げようとした未来の頭をジェイドはおさえ

深い口づけになる。

「こんなところで…」

「また無理をしたのと

おかしなことを言った罰です」

ジェイドは手袋をはめた右手で

未来の頬に触れた。

「本当に大丈夫なのですか?

微量でも障気は毒です」

「大丈夫じゃなかったら

こんなこともできないじゃない」

未来は初めて自分からジェイドにキスをした。



to be continued

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