■第五話「マスターセイ」

ゴーテルは予定より早く塔に帰ってきた。

しかし未来はいない。

かわりに手がかりになりそうなポスターは

見つけた。

「お尋ね者・セイ…

絶対許さないわ」

ゴーテルはナイフを持って塔を出た。


「ほら、ここだよ。

カフェ・メイクス」

セイが未来を連れてきたのは

一見おしゃれなカフェだった。

「すごい楽しみ」

ウキウキしながら未来は

カフェの扉を開けた。

「ひっ!」

しかし中にいたのはどの人も

いかつい盗賊のような男だった。

「いらっしゃい。

驚かせてしまったかな?」

しかしそこに清らかな声が聞こえた。

セイに似た顔の好青年がそこには立っていた。

「あなたは…」

「僕はマスターセイ、ここの店主だよ。

メイクスへようこそ!」

マスターセイはにっこりと未来に笑った。

「それよりお前、この犯人じゃないか?」

しかし男の一人がそう言ってセイに

ポスターをつきつけた。

ポスターには確かにセイの似顔絵と

「お尋ね者 生死問わず」

と書かれてあった。

「衛兵を呼べ!

賞金は俺のものだ!」

男達がセイを囲った。

「やめて!

私のガイドを離して!

あなた達には純粋な心が…

夢はないの?!

私はお城の光を見たいって夢があるの」

しかし未来の言葉でしんと静かになった。

「俺にも夢、あるなあ」

「俺は恋人が欲しい…」

みんな口々にそう語り始めた。

「あなたは?マスターセイ」

「僕はピアニストだよ」

そう言ってマスターセイは

見事なピアノの演奏を披露した。

「お前にはないのか?」

「えっと、俺は…」

太った男に指を刺されたセイは少し黙って

「俺はコンシェルジュになって

誰かの役に立ちたいんだ。

でも母を人質にとられて

仕方がなく盗賊を…」

「そうだったんだ」

初めて聞いたセイの状況に

未来は胸が痛くなった。

「衛兵を連れてきたぞ!」

そう男が飛び込んできた時には

もうカフェにいる全員が

セイの気持ちに寄り添っていた。


to be continued