■第三話「取引」

「ん…」

セイはゆっくりと意識を取り戻した。

「な、なんだよ、これ?!」

しかし椅子に縛り付けられていた。

それもセイを縛っているのは

髪の毛に見えた。

「目が覚めた?

あなたは動けないし

あなたの鞄は隠したわ」

「君は…」

セイは自分を縛っているものが

彼女の髪の毛だと分かった。

「髪の毛、どんだけ長いの?」

「白々しい。

髪の毛目当てだったんでしょ?

私の髪の毛は特別だから」

「そんなの知らないよ」

セイは首を横に振った。

「俺は逃げてきて、たまたまあった

この塔に上っただけなんだ」

「そう…」

未来は友達のパスカルと小声で話しあった。

「じゃあ分かった。

えっと…」

「名前はセイだよ」

「セイ、ね。私は未来。

あなたと取引してあげる」

「取引?!」

セイは驚いて少し大きな声を出した。

めんどくさいことに巻き込まれたと思ったのだ。

「この毎年私の誕生日に空に飛ぶ光を

どうしても見に行きたいの」

そう言って未来は

自分が壁に描いた絵をセイに見せた。

「あ、プリンセスを想って飛ばす光だね」

「飛ばす…やっぱり星じゃないのね!」

未来は嬉しくなって

セイのところまで駆け寄った。

「あなたを解放するから

光のある所まで連れていって。

そしてこの塔まで送り届けてくれたら

鞄を返してあげる。

セイ、どうするの?」

「…」

しばらくセイと未来は見つめあった。

「…わかった。

それでいいよ」

セイはうなずいて

すぐに未来の髪の毛から解放された。


to be continued