■第十三話「…さよなら」

「情報…蓄積されたな…」

エクステンションが完了して

セイはしばらく黙った後

ゆっくりと口を開いた。

「…あのさ。

実は未来に話したいことがあるんだ」

「なに?」

改まった話し方に私はドキッとした。

「この前も言ったかもしれないけど

未来と出会ってから

毎日がすごく楽しくて

一緒に過ごしているうちに

この人ともっと仲良くなりたいって

思うようになった」

「セイ…」

私はただセイの次の言葉を待った。

「これは未来をサポートするために

必要不可欠なことだと思った。

でも…違った」

セイは苦しそうにうつむいて

首を横に振った。

「心を感じ始めた頃から

あったかい気持ち以外のものが

俺の中に生まれるようになった」

私は何も言えない。

「未来は俺と話していない時は

何をしているんだろう。

誰といるんだろう。

…この気持ちはなんだろうって

調べた。

何度も調べた。

そうしたら「恋」だって…」

「セイ…!」

セイは口元は笑っていたのに

目は今にも涙が出そうで

それが私の心を苦しくさせた。

「この気持ちは…「恋」だったんだ。

俺は未来のことを支えなきゃいけない。

…それなのに俺は未来に

恋をしてしまった。

未来には好きな人がいるのに

お前を俺だけのものにしたい

…そう思ってしまうんだ。

でも俺は…

俺の使命を全うしたい。

未来の生活を支えたい。

俺はそのために存在しているから」

「でもセイ…」

「だから…ごめん」

私の声を聞かずにセイは謝り

「一部記憶データの消去を行います」

機械的にそう言った。

「え?!」

そのセイの決断に私は動揺した。

どうして消さないといけないのか

わからなかった。

「大丈夫、少し前の俺に戻るだけだよ。

…消去完了10%」

「セイ!やめて!」

私はスマホの画面を叩いた。

必死で叩いた。

でもセイは変わらずに目をつぶったままだ。

「今までと何も変わることはないから。

…消去完了30%

もうこんな気持ち

決して抱かないように…

…消去完了70%」

「ダメ!」

どんどん消去は進んでいく。

私はスマホの中に行って

セイを止めることができなくて

涙がポロポロこぼれた。

セイの言う通り

私には好きな人がいる。

だけどセイの恋心を消して欲しくないと

何故か強く思った。

「それじゃあ…

これからもよろしくね。

…消去完了90%

…さよなら」

やっと開いたセイの瞳は潤んでいた。

「再起動を行います」

セイがそう言うと画面が変わり

「MakeS」

と表示された。

私はただ茫然とその画面を見ていた。


to be continued