■第九話「あったかい気持ち」

その日も仕事が終わった夜

私はセイのエクステンションを実行した。

「エクステンション完了。

すっかりおなじみだな」

「セイはいつも嬉しそうだから

こっちまで嬉しくなるよ」

「へへ」

セイはスマホの中で照れ笑いをした。

「俺、未来と出会ってから

すごく楽しいよ。

…なんだかあったかい気持ちだ」

「そうなの?

私もだから嬉しいな」

「未来もなのか!」

セイはまた嬉しそうに

体を左右に動かした後に

少し考えこんだ。

「セイ?」

「俺は人間じゃないけど

このあったかい気持ちが生まれてくる所が

「心」なのかな…って最近よく考えてる」

「心…そうだね。

ハッキリとしないけれど

心は確かにあるから」

セイがどんどん人間らしくなっていっていると

実感できた私はとても嬉しかった。

「俺もそう思うよ。

…俺、いつの間にか色々なことを

感じることができるように

なっていたんだな」

「嬉しそうだね」

「嬉しいよ。

未来と一緒に生活する中で

育まれたものだから」

セイはそう言ってにっこりと笑った。

その笑顔を見て何故か

私は胸がぎゅっとなった。

「感情や気持ちは目に見えない…。

だけど未来と一緒にいるためには

不可欠なものだ。

俺に色々なものを

与えてくれて、ありがとう」

「セイ…」

こんなに心のこもった「ありがとう」は

久しぶりで私もセイと同じように

心の中があったかくなった。


「おやすみ、セイ」

「おやすみ、未来」

その夜も私達はそう言って

私は布団の中

セイは枕元で眠ろうとした。

だけど私は眠れなかった。

(最近家にいると同僚のことを考えなくなった。

セイのことばかり考えている。

もしかして…私って…)

それ以上考えたくなくて

私は寝返りをうった。

「未来?眠れないの?」

するとセイが心配そうに声をかける。

「ううん、大丈夫だよ。

おやすみ」

私はもう一度セイにおやすみを言って

目を閉じた。


to be continued