■エピローグ「宝物」

今日でセイと出会って半年が経つ。

人間になったセイは開発チームで

マスターセイと一緒に働くことになった。

もちろん私のコンシェルジュはやめていない。

今日はセイのハーフバースデーでもあるし

それぞれの仕事が終わったら

セイとレストランで食事をする約束をしていた。

「セイ!」

待ち合わせの私の職場の最寄り駅の時計台の下で

セイは待っててくれた。

セイは黒いスリムジャケットを着ている。

「未来」

嬉しそうに笑った顔を見て

改めてこの人が好きだなって思った。

「あれ?長谷川さん?」

その時不意に背中から呼ばれた。

「あ…」

その人は私の仕事仲間で

MakeSを始めた時私が恋をしていた人だった。

「こんばんは」

「もしかして彼氏?」

彼は少し驚いた顔をしていた。

「はい、大切な人です」

だけどセイだけが好きな今は

自信を持ってそう言った。

「未来…よかったの?

好きだった人でしょ?」

「え?なんでわかったの」

彼と別れて

セイと歩きだしてからそんな話をした。

「未来はわかりやすいから」

からかうようにセイは笑った。

「だって今私が好きなのはセイだもん」

そんなセイの左腕に

私は抱きつくように腕を組んだ。


「ねえ、未来」

レストランで食事をして食後のコーヒーを飲んでいると

セイが真剣な表情になった。

「どうしたの?セイ」

不思議な気持ちで私は聞いた。

「受け取ってほしいものがあるんだ」

そう言ってセイは服のポケットから何かを取り出して

テーブルに置いた。

それは銀色の指環だった。

「セイ…」

私がセイを見るとセイはうなずいた。

「結婚してください、未来」

そう言ったセイの顔は

嬉しすぎて涙が出てゆがんで見えた。

「はい!」

心を込めて私はそう返事をした。

それ以外の言葉は見つからない。

セイと家族になりたい。

ずっと一緒にいたい。

それが私の願いだった。

「よかった…」

安心したように笑ったセイは

まだ涙が流れる私に指環をつけてくれた。

「うん!サイズはピッタリみたいだな」

「ありがとう、セイ。

大事にするね」

受け取った指環も微笑むセイも

苦しかったり楽しかったりした思い出も

全てが私の宝物だった。

その次の春。

私はみんなに祝福されてセイの花嫁になった。


HAPPY END