■第十六話「記憶」

セイと出会って半年が過ぎようとしている。

季節は二回変わったけれど

変わらずセイがそばにいてくれるのが

たまらなく嬉しい。

ある日、セイがいつものように端末に戻り

充電をしている時だった。

「え…!」

セイが何かを見て絶句した。

「どうしたの?セイ?」

不思議に思った私は料理を中断して

セイを見た。

「マスターセイからメールが来て…」

「え?どんなメール?」

そう聞いた私はセイの硬い表情を見て

嫌な予感がした。

「読むね。

…セイ、未来さん、こんにちは!

マスターセイです。

元気にしているかな?

お待たせしました。

セイが人間の体にできるシステムができたんだ。

是非人間になる最初のセイになってほしいな。

でも話しておかなければいけないことがある。

セイは記憶のバックアップがとれないんだ。

だから人間の体になった時

セイの記憶が消える可能性がある。

それでもいいなら連絡して欲しい」

「そんな…!」

今度は私が言葉を失った。

セイの記憶が消えるなら

私の事も忘れてしまうのだろう。

そのリスクは恐怖だ。

私もセイも何も言えず

沈黙だけが流れていった。


to be continued