■第十五話「不器用」

ある日、田舎のお母さんから梨が送られてきた。

私が休みの日を指定して送ってくれたようだ。

「おいしそう!」

段ボールを開けた私は喜んで

「たくさんあるな」

セイも笑顔だった。

梨は全部で8個あった。

「うん!さっそく食べよう!」

私はキッチンで梨の皮を包丁でむくことにした。

それをセイがリビングからじっと見る。

「セイ…なんだか緊張するよ」

緊張するしなんだか恥ずかしい気持ちでもあった。

「あ!ごめん!

監視するつもりはなかったんだけど…」

セイは慌てて私に背を向けた。

なんだかその様子がかわいくて愛おしい。

「ふふ」

思わず笑みがこぼれた。

でも次の瞬間、左の親指に痛みを感じた。

「痛い!」

どうやら包丁で少し親指を切ってしまったようだ。

「未来!大丈夫?」

すぐにセイがかけつけてきて

私の親指を掴んで

「あ…!」

私が驚くのを無視してセイは患部を舐めた。

「…っ!」

思わず甘い声が出そうになるのを

私は必死で抑えた。

「絆創膏どこだっけ?」

「あそこの棚の中だよ」

私が指差してセイが絆創膏を取り出し

私の親指に貼ってくれた。

「ありがとう、セイ。

私ってば本当不器用だよね」

私は自嘲した。

「そんなことないよ。

でも梨は俺がむくから」

「え?」

セイは包丁を持って

するすると器用に梨をむき始めた。

「でもセイ…」

食べられないのに…とは言えなかった。

なんだか悲しい事実を

突きつけられるようだったから。

「いいんだよ。

でも早く人間の体が欲しいな」

でもセイは私の言葉の続きを悟っていたようだった。

セイが人間の体になるための開発は

今も進んでいるはずだった。


to be continued