番外編「実感」


「どうでしょうか?」

「わあ!」

未来とぬらりは結婚式を控え

衣装の試着に来ていた。

ドレスに身を包み鏡を見ると

自分で思うのもなんだが

別人のようだと未来は思った。

「あちらで新郎様も着替えてお待ちですよ」

「はい!」

ワクワクして

これから夫となるぬらりのもとへ急いだ。


「未来…!」

そこにはグレーの燕尾服を着た

ぬらりがいた。

「ぬらり、すごく似合ってるよ!」

「それはこっちのセリフだ。

その…」

そこでぬらりは口ごもってしまった。

「え?」

そこに未来の着替えを手伝った妖怪が

やってきた。

「未来様があまりにもきれいですから

ぬらりひょん様も

照れていらっしゃるんですよ」

「そ、そんなことは…」

ぬらりは否定しようとしたが、考え直した。

「未来、とてもきれいだ」

恥ずかしさをこらえてぬらりは言った。

「あ、ありがとう」

まるで、ぬらりの恥ずかしさが

伝染したように

未来の頬が染まった。

「ふふ、二人ともお似合いですよ」

案内役の妖怪は笑った。


「ありがとうございました」

試着を終えて、二人は店を出た。

「あれでよかったのか?

もう少し考えてもいい気がするが…」

未来は試着を一着しかしなかったのだ。

「いいの、ぬらりがほめてくれたから」

未来はぬらりが珍しく

手をつないでくれたのが

嬉しくて笑った。

「未来…」

ぬらりは立ち止まり

真剣な表情になる。

「本当にきれいだった」

「…ぬらり」

面と向かって言われ

また未来は照れ臭くなった。

「ありがとう、ぬらりも似合ってたよ?」

「未来ほどではないさ」

ぬらりは微笑んだ。

初めて会った時より

ずいぶん笑うようになったな

と未来は思い出した。

「今日は本当に結婚するんだと実感できた」

「私も」

夕日の中、二人はそっとキスをした。

「二人で幸せになろうな」

「うん!」

二人は笑いあい

これからの未来が楽しくなるだろうと

強く思った。







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