第二十九話「幸せな朝」


「ん…」

未来が目覚めると

いつもと違う部屋にいた。

「起きたか?」

するとすぐ近くから

ぬらりの声が聞こえた。

「ぬらり…」

昨日未来は

初めてぬらりの部屋に泊まったのだ。

「おはよう」

「おはよう、未来」

そう言ってぬらりは

未来にキスをして

優しく未来を抱きしめた。

なにも着ていないむき出しの

ぬらりのたくましい胸に

未来はドキドキした。

「もう少しこのままでいようか?」

「うん」

断る理由もなく

未来はぬらりの腕の中で

うなずいた。


「そろそろ朝食の時間だな」

「私を見たら

みんなびっくりするかな?」

「それは間違いない」

そう言いながら二人は服を着た。

未来が念ずると

バサッと音をたてて羽根がはえた。

「脱着可能とは驚いたな」

「うん。

でも妖怪市役所の人は

人間と間違えられないように

寝るとき以外はつけろって」

ニコリと未来は笑い

つられてぬらりも笑った。


「未来?!」

「未来様!」

二人が食堂に行くと

やはりエンマ大王達が

驚いた声をあげた。

「いつ帰ってきたんだ?」

「昨日の夜遅くです」

未来はドキドキしながら言った。

ぬらりの部屋に泊まった

とは言えなかった。

「未来様、よかったです!」

春日が抱きつきそうな勢いで言った。

「ごめんね、心配かけちゃって」

「まあ死んでよかったとは言いにくいが

これで妖怪同士だな」

エンマ大王は笑ったが

「まあ!」

春日は未来の左手を見て声をあげた。

「未来様、これはもしや

エンゲージリングですか?」

「なに?!」

するとエンマ大王も

まじまじと指輪を見た。

「あ、見つかっちゃった」

未来は恥ずかしくなった。

「なんだよ、ぬらり。

男らしくなったじゃないか」

からかうようにエンマ大王は言った。

「私は最初から男ですが?」

そう言うぬらりは幸せそうだった。

こうして、未来の大好きな日常が

また戻ってきた。


to be continued







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