第二十九話「正夢」


「ん…」

未来は夜中に目が覚め

そのまま身を起こした。

「あれ?」

「未来?」

ぬらりもつられたように起きて

未来と同じように起きた。

「あ、ぬらり…

ごめんね、起こしちゃった?」

「いや、大丈夫だがどうした?」

「なんだか不思議な夢を見たんだ」

思い出すようにゆっくりと

未来は説明した。

「不思議な夢?」

「うん。

光が空から降ってきて

私の中に入ってきたの。

嫌な感じとかじゃなくて

すごく幸せで…」

「そうか」

ぬらりは未来を背中から抱きしめた。

「…」

未来はそっと自分のお腹に手をのせた。


その日の夕方。

未来が帰宅すると

すでにぬらりが待っていた。

「あれ?ぬらり、早いね」

珍しいと未来は思ったが

未来の帰宅時間が遅いから当然だ。

「ああ、どこか行ってたのか?」

「ちょっと病院に…」

「なに?どこか悪いのか?」

ぬらりは心配になり

未来に駆け寄ったが

「ふふ。

慌てすぎだよ、パパ」

未来は笑った。

「まさか…」

驚いたぬらりに未来はもう一度笑う。

「うん!

桜の咲くころに産まれるって」

「そうか…そうなのか」

ぬらりはうつむいた。

「あれ?

ぬらり、もしかして泣いてる?」

「ち、違うぞ!」

ぬらりは慌てたが、その目は潤んでいた。

今朝の夢は正夢だったのかもしれない。


to be continued







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