第二十三話「ここでおやすみだった」
(あ!ここって…)
仕事中に未来は立ち止まった。
そこは大王の屋敷にある廊下で
部屋の扉の前だった。
その部屋はぬらりと結婚する前に
未来が暮らしていた部屋だった。
(ぬらりがここまで送ってくれて
いつもキスをしてくれたっけ…)
懐かしい気持ちになったが
仕事を思い出し
未来は再び歩き始めた。
翌日の昼休み。
未来はまたその部屋の前を通った。
「あれ?」
しかしそこにはぬらりがいた。
スラリと立って、部屋のドアを見つめていた。
「未来…」
「どうしたの?こんな所で」
歩いてきた未来にぬらりが気づき
未来はぬらりの隣に立った。
「少し前まではここで
『おやすみ』
だったな…と思っていた」
「そうだね」
ぬらりも同じ気持ちで
未来は嬉しかった。
二人は少しだけ黙って
改めて一緒に暮らせた喜びを
かみしめた。
to be continued
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