第二十七話「死」


「ねえ、ぬらり。
 
あっちも見てみようよ!」

「ああ」

休日に、未来とぬらりは町へ出かけた。

いわゆるデートだ。

手はつながなかったが

二人で同じものを見て笑うのが

未来にとってはすごく幸せだった。


二人は大通りに出た。

妖魔界ではあまり見ない車が走っていた。

「あそこのお店

エンマ大王がすすめてくれたよ」

「そうなのか?

じゃあ入ってみようか」

二人は笑いあい

横断歩道を渡ることにした。

すると小さな妖怪おならず者が

横断歩道の真ん中で転んでしまった。

痛みをこらえているのかうずくまっていた。

ブロロロロロ!

すると大きなトラックがおならず者に迫っていた。

「危ない!」

未来はとっさに駆け出した。

「未来!!」

ぬらりは止めようとしたが

未来は振り返らずに

おならず者を抱きしめた。

トラックはブレーキをかけたが

間に合わず、未来に接触した。

「うっ!」

そのまま二人は歩道にはねとばされた。

「未来!!!」

ぬらりは必死で未来のところへ駆けつけた。

「未来!しっかりしろ!!」

「ぬらり…」

傷だらけの顔で未来は微笑んだ。

おならず者は泣いていて無事のようだったが

未来は深い傷を負っていた。

地面に未来の血が流れていた。

「大丈夫だ、今癒しの術をつかえる妖怪を…」

「ううん。

自分でわかるの、もうダメだ」

「何を言ってるんだ!!」

ぬらりは大声を出した。

「ごめんね、ぬらり…愛してる」

ポトリと、ぬらりがあげたかんざしが

地面に落ちた。

そこで未来は目を閉じた。

「未来!!!!!!!!!!!」

ぬらりの涙が未来の頬に落ちたが

もう未来は動かなかった。


「ぬらり!」

「大王様?!」

ただ未来を抱きしめて

泣くことしか出来なくなったぬらりの肩を

エンマ大王は強く叩いた。

後ろにはデーモンオクレが控えていた。

「大丈夫だ、未来は妖怪になるだけだ」

「あ!」

ぬらりはすっかり忘れていたが

未来は人間だ。

「死ぬ」ことは「妖怪になる」ことを意味していた。

「とりあえず、未来を屋敷まで運ぶぞ!」

そう言ってエンマ大王は屋敷の方へ歩き出した。

そして何かを思い出したように

デーモンオクレを見た。

「オクレ、未来の魂を頼んだ」

「は!」

デーモンオクレは頷いた。

「それから名前や容姿をあまり変えないように

妖怪市役所へ伝えてくれ。

せっかくかわいい姿や名前をしているんだからな!」

「無理を言ってくれますね…

まあ、かしこまりました」

そう言ってデーモンオクレはすーっと消えた。


to be continued







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