第二十六話「遠慮は不要」


今日はぬらりが

視察から帰ってくる日。

未来はいつも以上に

夕食の支度を張り切っていた。

「張り切ってるな、未来」

「わ!エンマ大王?!」

鼻歌を歌いながらテーブルを拭く未来に

声をかけたのはエンマ大王だった。

「驚きすぎだろ」

未来の反応にエンマ大王は笑う。

「で、ですがまだお戻りになるとは…」

「ああ。

予定より早く帰れてな。

ぬらりも部屋へ寄ってから来ると言ったから

じきに来るだろう」

「ぬらりも?!」

愛しい人の名前に未来の顔は輝いたが

「あ!」

エンマ大王の目の前だと思いだし

冷静を保とうとした。

未来はもともと

エンマ大王の婚約者だった。

大王の前でいちゃつくのは

絶対にダメだと未来は思っている。

「いいさ、気にすんな」

しかしエンマ大王はもう一度笑った。

「え?」

「お前が気にするのもわかるが

俺はお前の幸せな顔が見たい。

だから遠慮は不要だ」

真っすぐにエンマ大王は未来を見た。

「エンマ大王…」

「それで?いつ祝言なんだ?」

「しゅ、祝言?!」

未来の声が動揺で大きくなった。

「なんだ?考えてないのか?」

「わ、私は…あ!ぬらり!」

ちょうどその時ぬらりが来て

未来はほっとした。

「ただいま、未来。

大王様となにか話していたのか?」

「え?ううん!なんでもない!」

未来は慌てて笑うのだった。



to be continued







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