第二十一話「初めからわかってた」


「はあ…」

未来は仕事の休憩中に

椅子に座りながら

盛大にため息をついた。

「いかがされましたか?未来様」

そこに心配そうな顔で春日が歩いてくる。

「あ!ごめんね!

たいしたことじゃないの」

「ずいぶん大きなため息でしたが…」

お茶を未来に渡して

春日が眉をひそめた。

春日は未来が大好きなのだ。

「うーん…実はぬらりのこと考えていて」

「喧嘩でもされたのですか?」

「全然!」

未来は慌てて否定した。

ぬらりと喧嘩は一度しかしていない。

「でもね…

ぬらりはかっこよくて

声も素敵で

議長で…

私なんかつりあうのかな〜って…」

「…ふふ」

春日が微笑んだ。

「未来様

それは最初から

わかっていたことではないですか」

「そ、そうだけど!」

「全くだ」

そこにあらわれたのは

ぬらり本人だった。

「ぬらり?!いつの間に…」

「未来がため息をついてからだな」

「全部聞いてたの?」

未来が焦りながら

そんなやり取りをしていると

さりげなく春日はその場を去った。

「未来…」

椅子に座ったままの未来を

ぬらりは優しく

後ろから抱きしめた。

「ぬらり?」

「私だって同じ気持ちだ。

こんなにきれいな女性と

恋人なのだから」

「わ、私はきれいなんかじゃ…」

未来は最後まで言えなかった。

ぬらりがキスをしたからだ。

「こんなところで…」

「未来」

戸惑う未来を無視して

ぬらりは甘く名前を呼んだ。

「もう少し自信を持て。

君は素敵な女性だ」

心がこもったぬらりの言葉は

未来の胸に温かく広がっていった。


to be continued







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